結ちゃんの「囲碁トピックス」

更新(10/12)
師に捧げる美酒<碁聖戦就位式>

坂井 感激の碁聖就位式

関西棋院60周年を飾る

「今回、首尾よく初タイトルを取れましたが、実力はまだまだです。五番勝負も、師の秀行先生(故藤沢秀行名誉棋聖)が見たら、怒られるような碁を打ってしまいました。さらなる精進が必要です」

坂井挑戦者が張栩碁聖との五番勝負を、三―二で制した第三十五期碁聖戦。その就位式(主催・新聞囲碁連盟、日本棋院、関西棋院)が十月五日、東京・港区の「第一ホテル東京」で行われ、たくさんの棋士、関係者が集まり、坂井新碁聖を祝った。

現在三十七歳の坂井、二十代のときは京都大学医学部に在籍し、国家試験に合格している。しかし囲碁への思いから医師の道を捨て、プロになった異色の棋士だ。

そのとき、二十八歳。第二十二回世界アマ選手権で世界一を獲得するなど、アマチュアとしてはすばらしい実績を築いてきたが、プロの世界は多くが十代で入段している。

祝辞の中には、いま明かされるプロ転向時の周囲の反応、父親の思いなど逸話もあった。

坂井のタイトル獲得は、そんなスタートのハンディを九年という年月で克服したものである。

坂井「プロになったら、経歴は関係なく、一戦一戦勝ち上がっていくしかないという気持ちでやってきました。これからもそうです」

そんな坂井の経歴に加え、関西棋院所属棋士としては、橋本昌二九段の王座以来二十九年ぶりの七大タイトル獲得、しかも関西棋院創立六十周年の年とあって、関西が大きく沸いたのは言うまでもない。

この日は東京でのお祝いだったので、関西関係者は少なかったが、家族は東京までかけつけ、晴れの舞台を見守った。

坂井「師匠の佐藤直男先生(九段)と、秀行先生がともに亡くなられ、この場にいないのがとても残念です。五番勝負を盛り上げてくれた関係者の方、家族、そして応援してくれたファンの方、みなさんに感謝したい」

努力の人は感謝の気持ちを忘れない。会場からひと際大きな拍手が起こった。(小川)
(『週刊碁』2010年10月18日号より抜粋)