結ちゃんの「囲碁トピックス」

更新(10/12)
井山連覇<第35期名人戦七番勝負第4局>

高尾に4タテで初防衛!

 史上最年少で名人を獲得した実力は本物だった―第三十五期名人戦七番勝負(主催・朝日新聞社)の第四局は十月六日、七日に神奈川県秦野市「陣屋」で行われた。中盤で劣勢に立たされた井山裕太名人は勝負手を放ち、粘り強く食い下がってヨセ勝負に持ち込む。終盤では高尾紳路挑戦者が見せた一瞬の隙を見逃さずに逆転に成功する。二百六十五手完、黒番中押し勝ち。ストレートで初防衛を果たした。 (記・朴道純)


【防衛インタビュー(「自分が一番びっくり」)】
―防衛おめでとうございます。現在の心境はいかがですか。

井山「自分のスタイルを貫けたのがいい結果につながったと思います。最高の結果を残せて本当にうれしいです」

―七番勝負が始まる前は若干成績が落ち、不調説がささやかれていました。いかがでしたか。

「昨年、タイトルを獲得してからは名人位にふさわしい活躍ができていませんでした。内容が悪いとは感じていませんが、勝ち星に見放されていたのは紛れもない事実です。『名人戦で勝ちたい』という気持ちはもちろんありましたけどそのような大それたことを言える身分ではありません。『自分の力を出し切り、精一杯打とう』と心がけました」

―今回の七番勝負は四連勝という最高の結果で終わりました。この挑戦手合はどのようなシリーズでしたか?

「第三局では納得できる碁を打つことができましたが、残りの三局は苦しい場面が多かったです。結果的にはまずい手を打ってしまいましたけれど、自分らしく打って現在の実力を出し切ることができたので満足です。ストレート勝ちできたのは幸運で、自分が一番びっくりしています」

--------中略--------
【差し手争い(第1譜)】
【厳しい手(第2譜)】
【主導権は高尾に(第3譜)】
【井山の勝負手(第4譜)】
【大事件発生(第5譜)】
【高尾、動揺(第6譜)】
棋譜、変化図、写真付きの記事全文は週刊碁10月18日号(10月11日発行)でお楽しみ下さい。
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黒をいじめた流れで黒107とコウを解消し、井山がゴールへ大きく前進した。逆境にひるまず、粘り強く打ち進める姿勢が奏功した格好である。

【第7譜 トン死で幕(第6譜)】
最後は中央から下辺にかけての白大石がトン死し、高尾が投了。井山がストレートで防衛を果たした。

負けた高尾は「一生懸命打ち、自分の力は出し尽くしたつもりです。でも歯が立ちませんでしたね。名人に教えていただき、勉強になりました。四局で終わってしまい、囲碁ファンや関係者に申し訳ないです。僕自身ももう少し教えていただきたかったのに残念。特に四局目は勝たなくてはいけませんでしたね」と高尾は悔しさをかみ締めながら語っていた。

一方の井山は、

「二日制という最高の舞台で高尾先生と打てて非常に勉強になりました。思うような実績を残せず、自信を失いかけていた時期もありました。今回の七番勝負で得た経験と自信を土台にしてこれからもがんばっていきます」と笑顔を見せた。

265手完、黒中押し勝ち

【対局情報】
持ち時間 各8時間(残り10分から1分の秒読み)

消費時間 黒(井山) 7時間58分
白(高尾) 7時間59分

終局 7日19時45分

立会 林海峰名誉天元

記録 甲田 明子三段、富士田明彦二段
(『週刊碁』2010年10月18日号より抜粋)