< テーマ図(黒番) >
100年の間、たくさんの名棋士が誕生していき、僕自身も先人達が残された対局棋譜に大きな影響を受けながらやってきました。
その中のお一人。新しい囲碁の世界を作られた棋士として武宮正樹九段の功績は凄く大きいと思います。武宮九段は『中央は1箇所しかない」という考え方を元に、中央に大きな模様を広げていく「宇宙流」と言われる打ち方を世間に披露されました。
隅と辺に比べて中央は地になりにくく、難易度の高い戦略ですが、武宮正樹九段はその常識の上を行く強さで数々のビックタイトルを取られ、一時代を築き上げられました。僕自身も院生の頃、その豪快なスケールの碁風に魅了されていたものです。
そして一番印象に残っているこの一手をご紹介していきたいと思います。僕自身はプロになりたて頃に拝見した一局で、囲碁界で本格的に世界戦が始まった初期の頃、林海峰九段と武宮正樹九段による世界囲碁選手権富士通杯の決勝戦の対局になります。
黒は中央に大きな厚みがありますが、白も各所で地をたくさん持っているので次の一手が大事な場面。