棋士が選んだこの一手

三村智保が選んだこの一手

対局日 1988年11月22日
棋戦名 第1回応氏杯 準決勝三番勝負第2局
対局者
(段位は当時)
黒 藤沢秀行九段
白 聶衛平九段



  • 藤沢秀行九段
  • VS

  • 聶衛平九段


< テーマ図(黒番) >
 私の師匠である藤沢秀行名誉棋聖の碁から取り上げました。この碁が打たれたのは秀行先生が63歳、私が19歳の時でした。相手の聶衛平九段は80年代の中国代表的棋士で、当時の世界最強棋士の一人です。黒の次の一手は私の発想に全く無かった手で、強く印象に残っています。
  • < 1図 >
     秀行先生は黒1と天元の石にツケていきました。白がAハネならば黒Bと叩き切って戦うという意味で、勇気のいる手です。今回本局をAIにかけてみたら、A、B、とこの黒1が示されました。やはり秀行先生の感覚は卓越していたのですね。
  • < 2図 >
     その後は中央でこの様に押してノビ合う、見たことも無い進行になりましたが、これも必然に近い手順の様なのです。
     この三番勝負は結局2局とも1点負け(応氏杯はコミ8点という特殊ルール)で終わりました。敗戦の翌日に秀行先生がその無念さを詩に書いて発表された。その内容も、良く覚えています。当時私は先生が36歳と若い聶衛平九段にヨセで差されたと思ったのですが、そうではなかった。むしろ僅かに追い込んで最小差の負けだったことも確認できました。
     鋭い感性と強靭さを併せ持つ60代棋士。少しでも近づけるよう努力して行こうと思います。

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