棋士が選んだこの一手

鈴木伸二が選んだこの一手

対局日 2008年10月15日
棋戦名 第33期名人戦七番勝負第5局 総譜はこちら
対局者
(段位は当時)
黒 張栩名人
白 井山裕太八段



  • 井山裕太八段
  • VS

  • 張栩名人


< テーマ図(白番) >
 僕は歴代最強の棋士は井山裕太だと思っているので、井山先生の碁から取り上げました。正直、いい手が多すぎて一手に絞るのが大変でした。
 当時20歳の井山先生が初めて挑んだタイトル戦で、僕が大好きなシリーズの一つです。
 右辺の黒が巨大でここまで黒が打ちやすいと言われていましたが、次の一手で形勢不明となります。
  • < 1図 >
     井山先生は白1とシチョウで取られている石を逃げ出しました。
  • < 2図 >
     黒2から6で取られてしまい部分的に見れば大損です。しかし、この局面では白5までの犠打により白7が先手になることが大きいと井山先生は判断しました。白9まで連絡すれば右辺の黒地が消えてだけでなく、右上の黒も手を抜けません。
  • < 3図 >
     2図の黒6で1とアテてくれば、今度は白2とこちらをツギます。黒3の切りと換わってから白4と逃げ出せばシチョウを回避できるのです。
  • < 4図 >
     シチョウの追い方は何通りかありますが、黒はシチョウ有利を保ったまま右辺を分断する手が見つかりません。

  • < 5図 >
     ちなみに先に白1とツグのは黒2と切られてシチョウを回避できていません。
  • < 6図 >
     もう片方のツギを決めるのも同様で白取られ。先にシチョウを逃げ出すのが絶妙な手順でした。
  • < 7図 >
     実戦の進行です。白は中央を犠牲にして右辺を先手で荒らし、左上の手どまりに先着しました。
     示されれば「なるほど」と思えるし理解できますが、実戦でシチョウを逃げ出す発想は普通浮かびません。

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