棋士が選んだこの一手

風間隼が選んだこの一手

対局日 1978年3月22日
棋戦名 第2期棋聖戦挑戦手合七番勝負第7局 総譜はこちら
対局者
(段位は当時)
黒 加藤正夫本因坊
白 藤沢秀行棋聖



  • 加藤正夫本因坊
  • VS

  • 藤沢秀行棋聖


< テーマ図(黒番) >
 私は日本棋院の院生になる前の子供の頃、棋書を図書館から借りてきて読んでいました。その中で特に印象に残っているのは棋聖・名人・本因坊の七番勝負の観戦記です。初期の棋聖戦七番勝負のシリーズは個性的な棋士の物語があり、囲碁の高度な技術的内容は分からないものの、対局中の思考の論点・考え方は分かりやすく、それを盤上で実現させている棋士たちに魅力を感じました。この碁はその中でも特に感銘を受けた一局。黒番で中国流を布いた加藤本因坊が序盤でリードを作った場面を紹介します。左上の形、黒が安定して一段落するためにどうすれば良いでしょうか。
  • < 1図 >
     黒1が「この一手」です。外側に犠打を打ちました。
  • < 2図 >
     白は切ってきた黒一子をとり、黒は隅を確保しました。この序盤の配石では左下に黒▲がきており、左上の白の厚みは活きにくく、黒が打ちやすい布石となりました。
     私の好きな言葉の一つに「繰り返しの作業にこそチエのレベルが現れる」という柿崎幸夫さんの言葉があります。この時期の加藤正夫九段は黒番で中国流・高中国流を多用されており、その言葉が思い浮かびました。
     いまでも囲碁ファンや囲碁教室の生徒さんからよく言われる事の一つに、七番勝負のタイトル戦で半目勝ちをしてみたいという夢をあげる方がいます。この棋聖戦七番勝負の最終第7局は終盤で半目勝負という名場面が実現した事もあり歴史に残る名局だと考えています。

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