棋士が選んだこの一手

関達也が選んだこの一手

対局日 2019年9月23日
棋戦名 第28期竜星戦決勝 総譜はこちら
対局者
(段位は当時)
黒 上野愛咲美女流棋聖
白 一力遼竜星


< テーマ図(白番) >
 上野愛咲美女流棋聖(当時)が全棋士参加棋戦でのタイトル獲得の大チャンスの1局。女性でただ一人本戦リーグを抜けて決勝トーナメントまで勝ち進むと、1回戦で高尾紳路九段、2回戦で村川大介十段、準決勝で許家元八段と強敵を立て続けにくだして決勝まで勝ち進み、大いに注目を集めました。
 そして決勝でも一力遼竜星の大石を仕留める寸前まで追い詰めましたが、ある筋を読み落としたことにより惜しくも優勝を逃しました。白の中央の石は死んでいるように見えますが、次の一手で息を吹き返します。
  • < 1図 >
     一力竜星が打ったのは白1。実はこの一手で白は生きているのです。これでは欠け眼で生きていないように見えますが……。
  • < 2図 >
     黒1には白2とコウを取ります。黒は左上にたくさんコウ材がありますが――、
  • < 3図 >
    ○8(5の左)●11(5)○12(7の上)●13(6の上)○14(5の左)
     右辺が「両コウ」の形のため、白からはここに無限のコウ材があります。
  • < 4図 >
     黒はコウに勝てないので最終的には白が1とツグことになります。白がコウに勝っても部分的には欠け眼ですが、特殊な形で白は生きているのです。

  • < 5図 >
     仮にダメが全部詰まっても黒からはAにもBにも打てません。この形ではBは欠け眼ではなく眼なのでした。
  • < 6図 >
     テーマ図の黒1では本図のように1と分断していれば白は生きられませんでした。実戦は世にも珍しい無限コウ材がある両コウ+コウが組み合わさった結果、欠け眼生きという特殊形での決着となりました。

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