上記七つの主要タイトル戦を七大タイトルという。2016年4月20日、第54期十段戦五番勝負第4局に勝利し、この七つの史上初の独占を果たした井山裕太。同年の名人戦で高尾紳路九段に敗れ、七大タイトル保持記録は197日(4月21日から11月3日)に終わった――。
ところが、そこから井山が底力をみせる。若手の成長も著しいなか、順に王座、天元、棋聖、十段、本因坊、碁聖の6タイトルすべてを防衛した。井山がよく語る「一手一手を大切に」がとんでもない新記録を打ち樹てたが、その歩みはここで終わらない。
さらに名人戦リーグで挑戦権を獲得し、挑戦手合七番勝負に戻ってきた。対するはもちろん高尾紳路名人。ふたたびの七冠達成はもう目前だが、井山は一手一手をいつくしむように打ち、勝ち星を重ねた。
10月17日――。名人戦第5局、高尾が投了し、名人を奪還。二度目の七冠の瞬間である。