囲碁は人生という人もいれば、囲碁は絵画という人もいる。ルールがシンプルで自由性が高いからか、囲碁はその人が大切に思っている「何か」を投影しやすいようだ。
三溪園で行われたアマノ杯青龍戦は伝統文化としての囲碁を引き立てるために様々な試みが行われたが、その一つにNHK大河ドラマ「天地人」や映画「利休にたずねよ」などを手掛けた脚本家小松江里子さんの観戦コラムがある。
小松さんは昨年2月に囲碁をはじめるとすぐにその魅力にとりつかれたという。藤澤一就八段一門を後援する「伝統文化棋道振興財団」の評議員にも名を連ね、本棋戦を魅せるという点でも一役買った。
「囲碁をしているとまるで脚本を書いている時のように集中して時間が過ぎるのが早いです。新しいことを初めて少しずつわかるようになるのも、河原裕(二段)先生に『上達しましたね』と褒められるのも楽しくて面白い」と囲碁ライフを堪能している。
そんな小松さんにとって、囲碁は物語だという。「脚本では伏線が大切です。最初の方で忍ばせていたことが後になって『こういうことだったのか』という感動につながります。囲碁も序盤で打った石が後になって思わぬ形で生きてくる。私にとって囲碁は物語ですね」
小松さんは決勝戦の模様を間近で観戦し、本木克弥九段の解説を聞きながら対局を追った。目指したのは囲碁のルールが分からなくても囲碁を楽しめる観戦エッセイ。現在、アマノ株式会社のHPで掲載中(アマノ杯青龍戦特設ページ)だ。数々の物語を紡いできた名脚本家は盤上の物語をどう表現するのか、ぜひ覗いてみてほしい。
記・品田渓
決勝戦を見守りながらメモを取る脚本家の小松江里子さん
藤沢里菜女流本因坊。本棋戦は出場者全員が艶やかな着物に身を包んだ。
上野梨紗女流棋聖
上野愛咲美女流立葵杯
謝依旻七段