入学式、新入社員など桜が似合うこの季節、井山裕太棋聖の防衛を祝い第41期棋聖就位式(主催・読売新聞社)が4月14日に東京都千代田区内幸町の「帝国ホテル東京」で行われた。
井山棋聖にとっては、今期の七番勝負は5期目にあたり、「名誉棋聖」の称号の資格を得るための節目の番碁。挑戦者の河野臨九段との手に汗握る激戦は記憶に新しい。
主催者挨拶として登壇した読売新聞グループ本社の老川祥一取締役最高顧問・主筆代理、日本棋院の團宏明理事長の話題の中心はもちろん5連覇について。老川最高顧問は「棋聖戦の5連覇は井山棋聖で3人目。藤沢秀行名誉棋聖、小林光一名誉棋聖に続いてのもの。もちろん入段から最短で最年少。すばらしい偉業」と絶賛した。
老川最高顧問から、純銀製のメダル「棋聖大賞」と、賞金の目録が井山棋聖へ贈られた。
棋聖戦は4リーグ制。挑戦者にもなったSリーグの河野九段、Aリーグの張栩九段、Bリーグ優勝の結城聡九段、Cリーグの志田達哉七段。どの棋士にも優勝のチャンスがあった、というのが棋聖戦のシステムのミソ。この4名も就位式に招かれ、壇上で記念品のメダルと大きな拍手がおくられた。
井山棋聖の師匠である石井邦生九段の愛ある祝辞が出色だった。
「私は井山を強くしたとは思ってない。勝手にすくすく強くなった」
「私も一念発起し井山のように強くなってやろうと、井山の言う〝打ちたい手を打つ〟を真似したが、痛い目に遭った」
「井山の打ち方は井山でないと難しい。〝ご使用〟には危険が伴います、けして真似をしないように、などと注意書きが必要ですね」(会場笑)
これには聞いている井山棋聖もニガ笑い。
続けて石井九段は、「世界を前にして井山はモタモタしていて、私も悔しい思いをしている。私は日本的な碁の感性や芸、考え方は世界に通じると考えている。ぜひ世界を日本に取り戻してもらいたい」と語った。
謝辞に立った井山棋聖は、5連覇の思いをかみ締めるように語った。
「この七番勝負は特に第3局は負けを覚悟した内容だった。河野九段の強さは何度も戦ってきてよくわかっている。こうした苦しい勝負をモノにできたのが大きかった。名誉棋聖の称号資格の獲得は出来すぎですが、5年間この最高の舞台で結果を残せて誇りに感じています」
「来年も棋聖戦で成長した姿を見せられるようにがんばっていきたい」
と、抱負で締めて万雷の拍手を受けた。