井山&里菜「強烈な努力を」【第55期十段・第29期女流名人合同就位式】


 梅雨の中休みの6月20日、井山裕太十段の防衛と藤沢里菜女流名人の奪取を祝い、第55期十段(主催・産経新聞社、特別協賛・森ビル)・第29期女流名人(主催・産経新聞社、協力・クイーポ)合同就位式が、東京都港区六本木の「グランドハイアット東京」で行われた。

 井山十段は今期の五番勝負、通算4期と連覇をかけての戦いだった。挑戦者の余正麒七段との激闘が昨日のことのようだ。
 藤沢女流名人にとっての今期の三番勝負は、謝依旻女流名人(第28期)の10連覇の節目という大きな意味を持つタイトル戦でもあった。結果はご存知の通り、激戦の末に謝を破り、藤沢は初の女流名人の座を勝ち取った。

 主催者挨拶として産経新聞社代表取締役社長の熊坂隆光様、日本棋院の團宏明理事長が登壇。井山十段と藤沢女流名人の活躍に賛辞をおくった。

 允許状の授与、賞杯・賞金の授与を行い、祝辞へ。まずは大竹英雄名誉碁聖から。
 大竹名誉碁聖「昨年、井山十段は7冠を達成した。これは大変なこと。タイトル戦1シリーズだって大変な波なのに、それをずっと戦い続けて勝っている。井山十段に言いたいことは一つ、健康に気をつけてもらいたい」
 つづけて祝辞にたったのは藤沢会の会長の中澤忠義さん。長く藤沢秀行名誉棋聖を慕い支えてきた方だ。今回、藤沢女流名人の後援会ができることになり、その会長もされている。「秀行先生は亡くなる前に里菜さんのことをとても期待し心配していました。韓国の曺薫鉉九段が里菜さんとお手合わせをしてその強さに太鼓判を押してくれたときも大変喜んでくれていました。その里菜さんが大きな花を咲かせてくれてとてもうれしい」。さらに秀行先生の絶筆「強烈な努力」を紹介し、激励の言葉とした。

 謝辞にたった藤沢女流名人は「謝さんとのタイトル戦はとても楽しみにしていました。反省の多いシリーズでしたが、憧れていた女流名人になれてとてもうれしい」。続けて「このたび後援会を立ち上げていただけることになり、さらにモチベーションをもって碁に向かうことができると思います。〝強烈な努力〟を胸に今後もがんばっていきたい」と述べ大きな拍手を受けた。

 それに続いて謝辞にたった井山十段は、「藤沢さん、女流名人おめでとう」と祝辞からスタート。「私も数年、秀行合宿に参加させていただいておりました。その当時、あどけない藤沢さんだったけど、こうして活躍するであろうことは確信していました」。謝辞に移って、「大変厳しいシリーズだった。余正麒さんに押されている時間も長かった。今は気持ちも調子も良い状態で碁盤に向かえている。今後は、ただの努力ではいけませんので、私も〝強烈な努力〟で戦っていきたいと思います」と締め、万雷の拍手を受けた。


藤沢(左)と井山。十段と女流名人合同の就位式でツーショット


「藤沢会」会長の中澤様からプレゼントのサプライズ。秀行先生の力強い遺墨の言葉は「志」


9連覇中の謝を破った藤沢。まだハタチ前だ


謝辞にたつ井山。「一般棋戦でも里菜さんは遠からず出てくる存在。私には、お手柔らかに」