関天元の三連覇か、一力棋聖の復冠か、天元戦五番勝負をライブ配信

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対談

 関航太郎天元(21)に一力遼棋聖(本因坊)(26)が挑戦する第49期天元戦(新聞三社連合主催)五番勝負が、10月10日に開幕する。天元と挑戦者が入れ替わった2期ぶりの顔合わせは、関の3連覇か、一力の返り咲きか。両対局者に意気込みを聞くとともに、孫侮オ段(27)と星合志保三段(26)にシリーズの展望を語ってもらった。


  • ――  関航太郎天元に一力遼棋聖が挑戦します。
  • 孫  関さんは物おじせず、自分の思ったことを貫くタイプ。そして形勢判断の力が、棋士の中でもトップクラスです。武宮先生(正樹九段)が、地を数えなくても石の流れで形勢がわかるとおっしゃっているのに近い。相手の手であっても「今のはちょっと評価値が落ちた」と、わかるのだと話していました。
  • 星合 AI(人工知能)同士の碁を鑑賞することで、AIの感覚が染みついているのでしょうか。そこまでやっている棋士はなかなかいません。
  • 孫  以前はAI一辺倒でしたが、最近はAIを参考にしつつ、自分ならではの手を打っています。関さんはAIの第一候補以外の手も深く研究している印象。AIが示す最初の候補手は、みんな研究しているので、そこではなかなか差がつきにくい。しかし第2、3候補だと研究の差が出てきます。
  • 星合 関さんのAI研究が深いことはよく知られていますが、手厚い碁を打ち、終盤力もすごい。前期のNHK杯では、一力さんを破って優勝しており、関さんはさらに進化しているなと感じました。
  • 孫  一力さんは序盤で知らない展開になったとしても、対応できる自信を持っています。なので、関さんの研究を正面から迎え撃つはず。戦いは大好きなので、両者の碁は、いつでも激しい展開になる可能性があります。
  • 星合 一力さんは、ミスターパーフェクト。早碁棋戦も正しい読みと判断で抜群の強さを誇り、隙がない印象。最近はメンタルも充実しています。
  • ――  どんな五番勝負になりますか。
  • 孫  初戦が勝負だと思っています。2年前の天元戦五番勝負は、一力さんから見ると歯が立たない内容で、悔しがっていました。関さんに苦手意識を持っていてもおかしくありません。そのときも初戦を落としているので、相当気合を入れて臨むはずです。もちろん関さんにとっても、初戦を勝って流れに乗りたいところ。1局目と2局目の間が近く、初戦の結果は2局目に影響があると思います。
  • 星合 2年前の再戦ですが、棋聖・本因坊の二冠になった一力さんの雰囲気はそのときとは異なります。関さんは大舞台になるほど強いので、どんな碁になるのか楽しみです。
  • 孫  一力さんは、黒番ではタスキ型の布石を好んで打っています。それは関さんも意識しているはず。関さんが白番のときに、2手目でそれを避けるのか、受けて立つのか。個人的な興味があります。

担当記者展望コラム/気迫あふれる真っ向勝負

 一力遼棋聖は今年に入り、棋聖防衛、本因坊奪取で二冠達成。碁聖戦では挑戦に失敗したが、天元挑戦を決め、年間で4つのタイトル戦出場となった。これは超一流の証しで、いま打ち盛りを迎えている。天元戦を制し三冠となれば、一力時代のはじまりと言っていい。最強の挑戦者だ。
 関にとっては3連覇の懸かる防衛戦。他の七大棋戦の成績は物足りないが、前期のNHK杯では一力を破って優勝しており、注目が集まる大舞台での強さは飛び抜けている。
 昨年、天元防衛を決めた直後に関は「負けていたら、何もなかったころの棋士に戻ってしまう」と声を絞り出した。現在、一力、芝野虎丸名人井山裕太王座に続き、日本囲碁界における関の序列は4位。タイトルホルダーにはシード権が与えられる棋戦もあり、天元の恩恵は計り知れない。
 両者ともに事前取材で、勝ちたい気持ちを前に出した。関が「天元は失いたくない」と宣言すれば、一力は「2年前のリベンジをしたい」と闘志を燃やす。ここまでストレートに感情があらわれるタイトル戦は最近では珍しい。気迫あふれる五番勝負となること必至である。
 AIソムリエと呼ばれ、AI発の最新定石に精通する関は、精密機械のような正確な形勢判断に定評がある。しかしその本質は、気合を重視した "戦いの碁"だ。
 挑戦者の一力も研究量の多い努力家で、何でも打ちこなすタイプと言えるが、深い読みを武器にした"戦い" を最も得意としている。
 「隙あらば斬る」という厳しさが両者の持ち味。終始 "戦い" の続く真っ向勝負を楽しみたい。(新聞三社連合・森本孝高)

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