学校囲碁指導員制度について
全国高等学校囲碁連盟名誉会長 岡本忠篤
囲碁はチェスなどと共に頭脳オリンピックにという話題があります。今、世界69ヶ国・地域に協会があり、毎年国際大会や世界選手権が行われています。国際性豊かな文化といえます。
お隣の韓国や中国の若い世代の囲碁熱はすごいのですが、立ち後れた日本でも沖縄県から始まった「囲碁を正課に」という取り組みが、大阪・東京にも広がりました。最近では総合学習などを含め様々な形で学校教育に囲碁が取り入れられています。また、2004年から、文部科学省・文化庁の後援を頂いて小中学校の団体戦が始まりました。囲碁は児童・生徒の思考力や集中力を鍛える面での教育的な効果が大きいことは多くの人々によって認められています。また、盤を挟んで他人と勝負することの意味も大きいのです。そこでは何よりもお互いを尊重する気持ちが大切です。尊重するといってもルールは厳正で、「まった」や口で相手の心理を攪乱するようなことはあってはならないことです。教育の囲碁では、落ち着いた雰囲気の中で、正しい態度、たとえば考えを決めてから石を持つなど、基本的な態度・姿勢をしっかり指導したいものです。
学校教育の中に囲碁がしっかり根を下ろす上で最大の隘路は指導者の確保です。統計資料はありませんが、学校現場で囲碁を打てる教員の数は確実に年々減っています。
20年~30年前は教職員40~50人の学校なら10人前後は囲碁を打てる教員がいました。宿直制度が囲碁の普及に貢献していた面もあります。今、学校現場は雑務に追われ、さらに本来家庭が果たすべき児童・生徒の基本的なしつけや、個々の生徒の学習の遅れ等が教員の課題として重くのしかかっていて、自身の教養や趣味に割く時間は乏しくなっています。
熱心な先生がいてクラブができ、あるいは正課の中に囲碁が取り入れられても、指導された先生の退職・転任で自然に消滅という形が心配されます。そこで日本棋院と高等学校囲碁連盟は平成13年に「学校囲碁指導員制度」を発足させました。現職の先生方は勿論ですが、退職された先生方にも「学校教育における囲碁指導の意義」や「初心者指導のコツ」などの講習を受けて頂き、教育としての囲碁指導の意義に確信を持って指導に当たっていただきたいというのが、この制度の狙いです。とりわけ退職されても時間と健康の許す範囲で児童・生徒に囲碁の指導をしていただければ、日本が世界に普及させた囲碁が、日本でも次の世代に広く引き継がれます。
ぜひとも教育現場の囲碁普及に協力してくださるようお願い申し上げます。