上野姉妹の用意周到さ「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


上野姉妹の用意周到さ




 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。

 「用意周到」は序盤研究の鬼、安斎伸彰七段が選ばれました。研究の精度が高すぎて、9路盤はほぼ解析済みかもしれないというのは恐ろしいですね。納得の人選です。しかし、そんな安斎七段とは別の意味で、つるりんの二人から「あの用意周到さはすごい」と評された人がいました。それは上野愛咲美女流棋聖です。

 上野女流棋聖はハンマーパンチと笑顔の印象が強く、受け答えもユーモラスなので、世の中的には天然のイメージがあるようです。しかし、「実は勝負に対してものすごく緻密で用意周到なしっかり者でもある」と二人は言います。



実はしっかり者の一面もある上野愛咲美女流棋聖

 まず、自分の作戦をしっかり用意しています。ハンマーパンチが必ず入るような碁形にする努力をしているのです。ただ、作戦を用意する棋士は多いし、その意味では安斎七段ほど用意周到とは言えないかもしれません。しかし、上野女流棋聖が本当にすごいのはそこではありません。前日に食べるもの、当日のルーティン、服装、対局に持っていく食べ物&飲み物、小物類、そのすべてがトップアスリート並みに考えられている。ここが最大の特徴なのです!



対局時の上野女流棋聖

 対局日の朝には777回縄跳びをすることは有名ですが、それ以外にも、お弁当には統計的に勝率がいいおかずを持ってきたり、飲み物を複数持ってきて気分や体調によって選べるようにしたり、バナナなど簡単に食べられるものを用意したり、ひざ掛けを用意したり、集中して臨める環境をつくることに妥協がありません。

 ちなみに、上野女流棋聖の妹、上野梨紗初段は棋風や性格はお姉さんと全然違うともっぱらの評判ですが、対局に挑むときの姿勢はとても似ています。和室対局の時には足が痛くならないように座椅子を持参し、複数の飲み物、必要になるかもしれない小物など、いろいろ配置して快適空間をつくり集中していました。



対局時の上野梨紗初段

 最大のパフォーマンスを発揮するためにできることは何でもしよう。囲碁はマインドスポーツといいますが、上野姉妹の戦い方はまさにアスリートそのものに見えますね!

記・編集K