中部総本部の棋風
ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。
次回から下島陽平八段をゲストに招いて、中部棋士編!ということで、今回は中部総本部のご紹介をします。
中部総本部所属棋士は全部で60人弱。200人以上を擁する東京本院と比べると規模がだいぶ小さいです。そんな、中部総本部の特徴を一言でいうなら、アットホーム。下島八段は「中部は棋院がひとつの村みたいになっていて、若手からベテランまで全員が顔見知り」と言います。東京では世代が違ったり、所属している研究会が違うと接点がないこともあるそうです。
中部のアットホームさは棋士の間だけに限りません。アマチュアと棋士の距離もとても近くて温かです。それは棋士もアマ大会やイベントを開催するにあたって積極的に関わるため。下島八段も柳澤理志六段、大澤健朗三段とともに長年、若い世代に囲碁を親しみ、楽しんでもらうための活動、nagoya amigo(なごやアミーゴ)を主宰していらっしゃいます。
私、編集Kも中部の大会に参加したことがあります。そして、棋士とアマチュアのあまりの距離の近さに衝撃を受けました。
たしかあれは5年ほど前、重野由紀二段らが運営する「だんご三世代囲碁大会」に参加した時のことです。この大会はプロアマ問わず参加可能の団体戦で、ルールは13路盤のハンディ戦であること、世代が違う人たち(子ども世代、親世代、祖父母世代)3人でチームを組むことでした。
そこには羽根直樹九段の奥様、羽根しげ子初段率いる羽根家チームが2チーム参戦し、中野寛也九段が中野家+教室の子どもたちを引き連れ、複数チームで参加していました。その他にも多くの棋士が家族や教室の生徒さんと組んで出場していて、その垣根の無さは圧巻でした。極めつけは大会終了後、かの大レジェンド、中京のダイヤモンドの異名を持つ羽根泰正九段が大会で出たゴミを集めて持ち帰っていたことです!
第38期王座戦五番勝負第5局。「中京のダイヤモンド」羽根九段が「殺し屋」の異名を持つ加藤正夫九段を破り王座を獲得。
若き日の羽根九段。第4回日中スーパー第9戦で中国の最強棋士、聶衛平九段に勝利。聶九段は日中スーパーで羽根九段に敗れるまで11連勝しており、中国では「鉄のゴールキーパー」と呼ばれる英雄的な存在。
「自分たちも大会の準備や後片付けは普通にしますが、それはもしかしたら上の先生方がそういうことをしているからかもしれませんね」と下島八段。中部総本部おそるべし! この主体性、結束力、ファンとの距離の近さ。中部総本部は最強に温かいアットホーム集団なのでした。