ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段)
碁界における覇王、井山四冠。
「棋士は孤独な職業だ」とプロの先生方は口をそろえて言います。たった1人の戦い。すべてが自分の責任。いわんや井山裕太四冠をや、です。しかしどんなに強靭な精神力があっても、孤独な戦いを続けるには心のオアシスが必要なはず。それは家庭かもしれないし、趣味かもしれないし、友人かもしれない...。
佐田篤史七段は「碁界の覇王、井山四冠には特に近しい友人が3人いる」と証言します。彼らは井山四冠が対局に勝っても負けても一緒に飲める気の置けない存在。覇王の孤独を少し和らげているかもしれない特別な存在...。ということで、今回のwebコラムではそんなお三方をご紹介しましょう。
【 村川大介九段 】
関西棋院を代表する棋士。研究者肌の静かな人柄です。佐田七段によれば村川九段は「井山先生の戦友的な存在」。2人は何度もタイトル戦で戦っており、2014年には村川九段が七冠達成間近の井山四冠から王座を奪取しています。
子どもの頃から切磋琢磨した村川九段は「井山四冠の碁に対する深い部分を理解している数少ない棋士」と佐田七段。私、編集Kも昔、村川九段自身が大盤解説会で「僕が井山さんの一番の理解者だと自負している」と話しているのを聞いたことがあります。時に戦う相手ではあるけれど、同じものを同じように深く探究していて、互いに認め合っている。井山四冠が信頼する戦友です。
【 吉川一四段 】
今回の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で「覇王之輔」として登場した井山四冠の側近中の側近と言われる人物です。井山四冠を『水戸黄門』の水戸光圀公とするなら、吉川四段は格さんでしょうか。情に厚くて、真面目な人柄。気配りの人で、佐田七段は「僕も含め後輩たちを何くれとなく助けてくれる頼れる先輩」と言います。
一方で、いじられキャラなところもあるらしく、「吉川さんをこんな風に紹介したら井山さんは『ほんまは吉川となんて飲みたないけど、他に選択肢がないから仕方なくや(笑)』とか言いそう」とつるも佐田七段も言っていました。そんなイメージを持たれることこそが2人の距離の近さをものがたっているようです。
【 小松大樹四段 】
吉川四段が格さんなら小松四段は助さんです。ご覧のとおりの凛々しいイケメンで、そのイケメンぶりは井山四冠も認めるところ。いわば、井山四冠公認のイケメンです。
あらゆる研究会や碁会所に通じているといわれるほどの人脈を持ち、かつ、困ったことがあるといつも現実的な解決策を提示してくれるクールさを兼ね備えている。佐田七段ら後輩たちにとっては「人情家の吉川四段とは別の意味で頼れる存在」といいます。井山四冠との関係性は吉川四段と同じくらい深く、佐田七段は「たぶん、小松先輩は自分の方が井山先生と近しいと自負していると思う」と話していました。