ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段)
佐田篤史七段をゲストに招いての関西棋士編、最終回は関西棋院の大御所、結城聡九段を取り上げました。部分研究のスペシャリストで、研究会などでとてもお世話になっているという佐田七段は「僕は結城先生から最善を尽くす楽しさを教えていただきました」と話します。屈指の鉄道マニアで熱狂的な野球ファン。碁も鉄道も野球もとことん追求する姿から「一球入魂」の称号を与えられました。
さて、そんな結城九段が文字通り、一球入魂したことがあるのをご存知でしょうか?
2014年5月23日、NHK杯で3連覇の偉業を成し遂げた結城九段は「ほっともっとフィールド神戸」で行われた「日本生命セ・パ交流戦オリックス・バッファローズ対広島東洋カープ戦」の始球式に登板したのです。球場で直接結城九段の勇姿を見たという佐田七段に当時を回想してもらいました。
毎日新聞社提供
「結城先生が登板されるということで、関西棋院がツアーを組んでいたので、僕も参加してきました。この日は快晴で、マウンドに上がった先生のユニフォームは輝いていました。先生のユニフォームはもちろんオリックスのものだったのですが、これは先生の自前だったそうです。あと、グローブも自前だったと聞いています。
ドキドキしていると場内アナウンスが聞こえてきました。『これより始球式を始めます。NHK杯3連パイの結城聡九段・・・』。みんなで『何の記念やねん』って大爆笑したのを覚えています。
先生はこの日のために投球の練習をすごくしてきたそうです。ビシッと立って、大きく振りかぶると先生はボールを投げました。ボールは先生の手から離れるとゆっくりとミットに吸い込まれていきました。先生渾身のチェンジアップは今も鮮やかに記憶しています」。
ノーバウンドでしっかりボールをミットに収めた結城九段は、大ファンであるT−岡田選手との記念撮影も無事に行い、終始ニコニコだったそうです。今からちょうど8年前の記念すべき出来事でした。