奇跡を呼ぶ男、その名は河野臨!!「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回は棋士間で絶大な人気と信頼がある、河野臨九段が登場しました。一途に楽しそうに碁を追求する姿に「囲碁の素晴らしさを再認識させられる」とつるりんは言っていました。棋士をそんな気持ちにできる河野九段は本当にすごい方ですね!
 さて、ここではそんな河野九段のとある特殊能力についてご紹介します。




 その昔、「本能寺の変」の前夜に織田信長の御前で打たれた碁に3コウが現れたという伝説があります。この「3コウ」は現れると同型反復になってしまう、将棋でいうと千日手のようなもの。永遠に終わらなくなってしまうので、その形が現れると「無勝負」となり、打ち直しが行われます。
 この同型反復になる形は3コウや4コウなどがあるのですが、これらが実戦で現れ、無勝負になる可能性は1万局に1局あるかどうか。限りなく0に近い、ほとんどないことなのです。そのレアぶりは日本棋院の公式記録にたったの25例しかなく、ここ6年は少なくとも国内の公式戦で一度も現れていないと言えばわかっていただけるでしょうか。もし、あなたの対局にそれらの形が出てきたら・・・、それはもう奇跡なのです!
 ところが、このほとんどの人が一生経験することなく終わる「無勝負」を、河野九段はなんと、公式戦で3回も引き当てているのです。現役の棋士だけでも約500人いて、記録が残る限り25例しかなく、河野九段の公式戦対局数が1300局と少しであることを考えると、それがどれだけ異常なことかが分かります。

つる「部長(河野九段)の碁への愛が奇跡を呼ぶんですよ」。
りん「部長の無意識の心の叫び、『もっと碁が打ちたい』という気持ちが『無勝負』を引き寄せちゃうんですよ」。

 「本能寺の変」前夜に現れた3コウは、そのレアさと翌日に起こった悲劇によって後に「凶兆」とされましたが、碁をこよなく愛し、いつまででも何局でも碁を打っていたい河野九段にとっては、まぎれもなく「吉兆」であることでしょう。



第40期碁聖戦本戦準々決勝、河野九段VS三谷哲也七段戦で4コウ無勝負が発生した。めったにない現象にそわそわする関係者。


記・編集K