碁を理解したい−大西竜平七段が大学に行った理由「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回は碁界屈指の甘いマスクの持ち主、大西竜平七段が登場しました。つるりんのお2人いわく「竜平くんが打つ手は誰も真似できない」のだそう。普段の発言も着手と同様、どこか深淵で謎めいているとか。私、編集Kも以前、大西七段を取材させていただいた時にその独自の世界観に触れました。取材をしている間、まるで哲学問答をしているようでした。つるが「竜平くんには宇宙を感じる」というのがわかるような気がします。




 さて、そんな大西七段は早稲田大学卒の高学歴棋士です。入学当時すでに入段していて、有望な若手として注目されていたのに、なぜ大学に進学しようと思ったのでしょう。お聞きしてみるとその理由は想像もしていなかったものでした。
 大西七段「僕にとってはイ・セドルさんがアルファ碁に負けたことが大きくて、それで大学に行こうと思いました」。
 編集K「それは、ショックを受けて別の道を考えたという意味ですか?」
 大西七段「いえ、このまま碁だけをやっていても碁を理解できないと思ったからです」。
 編集K「AIの仕組みに興味が出たということでしょうか」。
 大西七段「いえ、碁を強くなるために大学に行きました。視野を広げることが碁の理解に必要だと思ったからです。僕はあくまでも棋士で、棋士として大学に行った方が成長できると考えたんです」。

 碁を理解したくて碁ではない勉強をする。なんとも逆説的ですが、大西七段の言葉には不思議と説得力がありました。ちなみに大西七段の専攻は社会科学です。専門化が進む現代社会ではありますが、たしかに碁も社会もあらゆるものがどこかで繋がっています。そう考えると碁を理解するために大学でまったく違う分野の勉強をするというのは理にかなっているのかも?大西七段、スケールが大きいです。


記・編集K