ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段)
今回は長年にわたってその時々の若者を重たいパンチで沈めてきたレジェンド、ロッキーこと淡路修三九段が登場しました。つる&りんも淡路九段に行く手を阻まれてきたこと数知れず。御年73歳ですが、その溌剌とした打ちぶりは変わりません。
なぜ、淡路九段はこれほど溌剌としていられるのでしょう。お話しを伺う中でその秘密の一端が垣間見えてきました。
淡路九段は今、「碁が楽しくて楽しくて仕方がない」と言います。特に囲碁AIソフトが出てきてからは毎日が新しい発見でワクワクしているそうです。「AIは親友みたいです。『ここはどう打つのかな』と疑問に思ったらAIに『AI、きみはどう打つ?』と聞いてみる。そうすると、斬新な発想を見せてくれるんですね。私はAIに新しい手を教えてもらったらそれを実戦で試したくて仕方がないんです。対局したらそれを教材にして新しい手を仕入れる、そして仕入れた新しい手を実戦で試す、そしてその対局をまた教材にする、終わりがないお勉強です。面白いですねぇ」。
淡路九段は人生の大先輩にもかかわらず、編集Kはゲームや虫取りに夢中な少年がその素晴らしさを熱く語っている光景を連想しました。好き、楽しい、面白い、知りたい。純粋な好奇心だけが放つ輝き。18歳で入段してから半世紀以上も職業にしていることに対してそのような気持ちで向き合えるとは、なんて素敵なことでしょう。
人が積み上げてきた知見を覆すAIの出現は見方を変えれば災厄とも取れますが、淡路九段からは前向きに変化を楽しむ言葉しか出てきませんでした。過去を懐かしんだり、未来を憂いたりすることなく、少年のような好奇心でもって今起こっている変化を楽しむ。淡路九段がいくつになっても溌剌としていられる秘訣はそのあたりにあるのかもしれません。