ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段)
今回から読者の皆様からリクエストいただいた四字熟語を取り上げています。記念すべき第1回は「博覧強記」。棋士はただでさえ記憶力が抜群にいい人々の集まりですが、その中でもあえて選ぶならこの人とつる&りんが名前をあげたのは安達解説員としてユーチューブ中継に度々登場している安達利昌七段でした。
安達七段がいかに記憶力に優れているかは紙面に譲るとして、本コラムでは安達七段をよく知るお二人から、少し違った角度で証言をいただいたので、そちらをご紹介しましょう。
最初の証言者は寺山怜六段。寺山六段は安達七段と同じ棋士野球部の主力メンバーということで、安達七段の野球部員としての素顔をお聞きしました。
Q同じ野球部員として、安達七段はどのような存在ですか。
「安達くんですか。彼は体が大きくてパワータイプのプレーヤーに見えると思うんですけど、実際には繊細で技術を駆使するタイプなんですよね。その意味ではプレースタイルは囲碁と似ているかもしれません。あと、彼はとってもマメで、何でもやってくれるんです。ポジションも何でもいけますし、練習の場所取りや部員内の連絡まで、本当に何でも。なので、一言でいってしまうと、彼は野球部の何でも屋ですね。この場を借りていつもありがとうと言いたいです」
続いての証言者は平田智也七段。平田七段は安達七段を「ボードゲームの天才」と評しているというウワサを聞きつけ、直接当たってみました。
Q安達七段は「ボードゲームの天才」と聞きました。本当ですか?
「そうですよ。どんなボードゲームでもめちゃくちゃ強いです。そのゲームがどうやったら勝てるのか、コツをつかむのが天才的にうまいんでしょうね。将棋も相当な腕前で、僕は何度も安達くんが詰将棋の難しい問題、例えば15手詰なんかをひと目で解いているのを目撃しています。あと、変形囲碁で戦ったら安達くんの右に出る人はいません」
Q変形囲碁とは何ですか?
「変形囲碁はいろいろあって、有名なものだと『4プラ』とかですね。『4プラ』は普通の囲碁に『自分の石がタテヨコナナメに4つ並んだらもう一手打てる』というルールを追加したものです。普通の囲碁だと安達くんより強い人はたくさんいますが(笑)、この4プラ碁で安達くんに勝てた人を僕は見たことがありません。以前、大竹(優七段)くんが『僕、4プラには自信があるんです』と言って安達くんに挑むのを見たことがありますが、安達くんは『じゃあ、4子置いてごらん』と言った上にきっちり勝っていました(笑)」
安達解説員は記憶力が抜群で、囲碁の最新型をよく知っていて、野球でどのポジションもできてしまうくらい運動神経が良く、マメで、どんなボードゲームも得意で、特に変形囲碁では無双しているということがわかりました。もしみなさまの中に「4プラ碁」に自信があるという方がいたら、ぜひ挑んでみてください。「じゃあ、9子置いてごらん」と言って打ってくれるかもしれません(笑)。