ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段)
今回は吉原(梅沢)六段が監修したマンガ『ヒカルの碁』通称「ヒカ碁」のリスペクト企画!!長くなりすぎてしまったので、2部に分けました。
「ヒカ碁」によって棋士への道を歩むことになった「ヒカ碁」大好き棋士、木部夏生三段プレゼンツ、今研メンバーの「私は『ヒカ碁』のココが好き」。第1部では森智咲初段と小山空也五段の好きなキャラ&シーンをご紹介しました。第2部ではどなたが登場するのでしょうか。
【プレゼンター=木部三段】
はい、棋士の木部夏生です!次は私と同世代の2人を紹介します。
1人目は横塚力七段!
力ちゃんが好きなキャラは社(やしろ)だそうです。理由は・・・これ、私ちょっと分からなかったんですけど、「ツッコミがおもしろいから」って書いてありますね。これ読んで、そんなシーンあったっけ?ってなったんですけど、力くんが言うには「飯はくうんか」って社が言ってるシーンがあって、それが好きらしいです。うーん・・・独特!
ヒカ碁のすごいところは本当にリアルなところで、この社の存在もすごく碁界のリアルなところを表していると思います。ヒカルを中心に東京本院でのことが描かれていたけれど、後半になって、関西の有望株として社が出てくる。しかも、彼は微妙に親御さんに棋士一本でやることを反対されてたりするんですよね。院生には年齢制限があって、プロ試験を受けられる時期と高校受験する時期がかぶるので、みんな進路のことで悩むんです。ここの描写もとてもリアルでした。
2人目は本木克弥八段。本木先生はたぶん、最強のヒカ碁マニアです。
同じ藤澤一就八段門下なので、プロを目指して一緒に勉強していた頃、よくみんなで本木先生にヒカ碁の問題を出すっていう遊びをしていました。ヒカ碁の問題っていっても、普通の問題じゃなくて、「〇〇のシーンでヒカルたちが頼んだハンバーガーの種類は?」とか、「〇〇のシーンでヒカルたちが入っていったビルの名前は?」とか、そういうレベルです。それでも、ほとんどの問題を本木先生は答えられるので、誰が先生に解けない問題を出せるか、みんなで競ったりしていました(笑)。
で、本題ですが、そんなマニアな本木先生が好きなキャラは緒方九段、理由はかっこいいからだそうです。
緒方九段は塔矢アキラの兄弟子でヒカルたちが修業している時に一線で活躍している棋士です。大人の色気がムンムンで、子どもの頃は気づかなかったけど、今見るとかなりかっこいいキャラですね。
そして、好きなシーンは伊角さんが中国に修業に行って、ヤンハイさんに「感情のコントロール?そんなのは習得できる技術だ。石だけを見ろ」と言われて開眼するところだそうです。めちゃくちゃ共感します。これは棋士なら少なからず悩むことなので、本当に染みるんですよね。ちなみに、私も韓国の道場に短期留学をしたことがありますが、ヤンハイさんはいなかったけど、レェピンはいっぱいいました(笑)。日本の同世代の中でトップだと思っていても、海外に行くと自分より小さくて強い子がいっぱいいて、ショックを受けるんですよね。
次は私より上世代の先生方です。まずは安達利昌七段です。
安達先生が好きなキャラは伊角さん。それを見て、はいはい、よくあるやつですね、と思ったら好きな理由に「『越智黙れ』からしっかり勝つところ」とありました。そっちかぁー(笑)。
伊角さんはめちゃくちゃ優しいキャラなんですけど、その伊角さんがプロ試験の時に越智に煽られに煽られてついにキレるんです。越智は院生トップで大変な相手だけど、伊角さんはその越智にも勝てる実力がある。直前に煽られて怒っていても冷静な碁が打てる、そんな強い伊角さんが安達先生は好きなんですね。
最後にご紹介するのは平田智也八段です。
平田先生が好きなキャラは和谷、冴木さん、河合さんだそうです。和谷はともかく、冴木さん、河合さんにピンときたら相当なマニアですよ。冴木さんは和谷の兄弟子で、平田先生は好きな理由を「かっこいいから。自分の理想」と書いています(笑)。河合さんはヒカルがいなくなった佐為を探している時に、秀策のお墓とか、あちこち連れて行ってくれたタクシーの運転手さんです。好きな理由は「いい人だから」。こういうところに注目するのが平田先生らしいですね。
平田先生が挙げてくれた好きなシーンもすごく先生の人柄がわかる「らしい」チョイスでした。2つあって、1つは本田さんが焼き芋を買うシーン、もう1つは奈瀬が「こんな碁が打てるからやめられないのよね」というシーンだそうです。両方ともちょっと切なくて、なんかジーンとくる場面なんです。ああ、話してたら「ヒカ碁」が読みたくなってきました。
それぞれの好きなキャラ&シーンをご紹介してきましたが、やっぱり個性が出ていますね。皆さんの好きなキャラはなんですか?『ヒカルの碁』は本当にリアルで面白いので、皆さんもぜひもう一度読んでみてください。
- * 本コラムは木部三段のユーチューブチャンネル「女流棋士・べっきーの電波塔」とのコラボ企画です。本コラムはかなりギュギュっと圧縮されているので、もっと知りたい!という方はぜひ「べっきーの電波塔」へお越しください。木部三段の軽快な「ヒカ碁」トークは絶品ですよ~!