ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段)
瀬戸大樹八段をゲストに迎えての関西棋士編第3弾。今回はつる&りんにとっての関西のおねえさん、つくねえこと佃亜紀子六段が登場しました。瀬戸八段によると、つる&りん世代だけではなく、関西総本部のガールズ4(大森らん初段、塚田千春初段、本田真理子初段、安田明夏初段)もみんな慕っているとか。人望が厚い佃六段は棋風も厚く、若手に交じって各棋戦で上位に勝ち上がっています。
さて、本コラムではそんな佃六段の結婚生活に迫るドキドキの企画をご用意しました。実は佃六段は将棋棋士、伊奈祐介七段とご結婚されています。囲碁棋士と将棋棋士、同じ棋士だから分かり合えるところと、「囲碁」と「将棋」で感じる微妙な違い。お話をうかがっていくとポストコロナ時代に役立ちそうな夫婦円満の秘訣が見えてきました。
【佃亜紀子六段インタビュー】(インタビュア=編集K)
- ― 今回は佃六段と伊奈七段、囲碁と将棋の棋士夫婦だから思うこと、というのをテーマにお話をうかがいます。よろしくお願いいたします。
- ○ 何にも面白いことないかもわからないですけど、よろしくお願いいたします。
- ― まず、最初にうかがいたいのですが、ご結婚されて何年でらっしゃいますか?
- ○ 何年やろ。結婚したんが平成17年やから、18年になりますねぇ。
- ― 出会いのきっかけをうかがってもいいですか?
- ○ そんなんも聞かれるんですか(笑)。夫の師匠の小林健二九段が囲碁もお好きで、囲碁棋士と交流があったんです。その関係で知り合いました。
- ― どんなところに惹かれて?
- ○ そんなん覚えてません(笑)。
- ― 調子に乗りました。すみません(笑)。では本題ですが、将棋棋士と囲碁棋士で何か共通点を感じたり、逆に違うなと思ったりすることはありますか?
- ○ 急に言われても出てきませんけど・・・。なんやろ。
- ― 研究は普段同じお部屋でされてるんですか?
- ○ いえ、別々です。私が1階で彼が2階で。だから夫が何をしてるんだかさっぱりわかりません。
- ― 佃さんは将棋を指されますか?
- ○ 5級くらいですけど指せます。夫の碁はアマ初段くらい。だから、私の碁を勝手にAIに入れて、帰ってくると「この手で評価値がガクッと下がってだめになった」とかえらそうに言ってくるんです(笑)。
- ― それは面白いですね。NHK杯はいかがですか?囲碁と将棋両方観たりしていますか?
- ○ 私は囲碁だけ観てます。夫は競馬が忙しいんで両方観てないです(笑)。
- ― 対局の前や後はやっぱりピリピリするものですか?
- ○ どうやろ。昔はあんまり結果をこちらから聞かんようにしてましたけどね。子どもができたら子どもが「勝ったん?負けたん?」って聞くので、今はあんまり気を遣ってないです。
- ― 同じ棋士だから共感できるなというところはありますか?
- ○ やっぱり逆転負けとかはキツイやろな、とかは分かりますね。そうそう、将棋と囲碁で違うところですが、将棋の方が一局を通してずっと読み続けないといけない、囲碁でいうとずっと詰碁を解いているみたいな感じなので、それが大変そうやなと思います。勝負はいつも100‐0で、囲碁みたいに51‐49があるわけじゃないので、負けた時はより悔しいやろなとは思いますねぇ。
- ― ゲーム性の違いを感じる時があるんですね。
- ○ そうですねぇ。あと、将棋はフリークラスに落ちてしまうと、一定程度の成績を出せなかったら引退なので、それは大変やと思います。それから、将棋の方が持ち時間が長いので、帰りが遅いことが多いですねぇ。
- ― こうしてお聞きするといろいろと違いがありますね。伊奈七段の妹さんはマンガ家の伊奈めぐみさんで、渡辺明名人との夫婦生活を描いた『将棋のわたなべくん』の著者でいらっしゃいます。『将棋のわたなべくん』を読んで、ここは同じだな、と思うことはありますか?
- ○ なんやろ。とにかく家におるっていうのは思いますねぇ。手合は毎日あるものではないので、普通にお勤めの方と比べると家にいる時間がものすごく長いとは思います。私は女流棋戦があるので、まだ少し対局数は多い方ですけど、それでも基本は家におりますし、夫なんかずっと家におりますし(笑)。渡辺さんなんてうちから見たら全然家にいらっしゃらない方やと思います(笑)。
- ― 伊奈七段はご自宅でどんなことをなさってるんですか?
- ○ 一人で散歩に出かけたり、田んぼや庭仕事をしたり。子どもを見てくれたりもするので、助かっていますよ。
- ― それは素敵ですね。
- ○ 基本はお互いにマイペースで過ごすようにしています。四六時中同じ家におるんで、干渉しない方がいいんです。
- ― なるほど!!
- ○ コロナ禍で一緒の時間が増えて大変というご家庭が多いとニュースでやっていましたけど、うちはもともと家におるからあんまり困らなかったですね(笑)。
- ― 適度な距離感でマイペースに過ごす。これはためになる教訓ですね。夫がコロナ以降、在宅ワークが増えてきたので、参考にさせていただきます。本日はありがとうございました。
記・編集K