ぶらり碁会所巡りの旅~関達也三段の歩き方「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


 ここでは週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介します。(つる=鶴山淳志八段、りん=林漢傑八段

 今回は全国各地津々浦々の碁会所を旅して回るさすらいの棋士、関達也三段をご紹介しました。私、編集Kにとって旅人といえばスナフキン、水戸光圀公、火野正平さん、太川陽介さん、関三段です。本コラムではそんな個人的5本の指に入る旅人、関三段にインタビューを行い、どのように旅をしているのか、何が旅へと突き動かしているのか、旅の醍醐味は何かなど、思い付くままに聞いてきました。



旅はいつもリュック1つで。最低限の持ち物でコインランドリーを多用するスタイル。
宿泊費と移動費は極力抑える代わりにいつでも身軽にどこまでも。年100日以上旅をする関三段。

(インタビュアー・編集K)

  • ― 今回は碁会所巡りの旅についてうかがっていきたいと思います。まず、これまで何ヶ所の碁会所を回られたのでしょうか。
  • ○ 「碁会所」は85ヶ所、公民館の囲碁クラブなども含めると100ヶ所近く回りました。
  • ― ・・・すごい数ですね。旅のはじまりを教えてください。
  • ○ いろいろきっかけはあるんですけどね、一番はコロナ禍で小さい頃にお世話になっていた碁会所がなくなっちゃったことでしょうか。碁会所には子どもの頃毎日通って、本当にいい思い出しかないので、寂しくて。どんどん碁会所がなくなってしまっているのを見て、今のうちに碁会所の風景を目に焼き付けて、記録して、碁と碁会所が好きな皆さんと共有したいと思ったんですね~。
  • ― すごく共感します!!私も碁会所に育てていただいたようなものなので、本当に碁会所がなくなってしまうのは寂しいです。だから、関三段がそういう文化を記録してくださるのはとても嬉しいです。ところで、旅の行き先はどんな風に決めてらっしゃるんですか?
  • ○ なるべく皆さんが知らなさそうで、行きにくそうな場所から行くようにしていますね。誰にも知られずに無くなってしまうのが一番寂しいと思うので。けれど、遠くに行くには飛行機に乗らないと行けないし、旅費がかかってしまいます。だからJALやANAのセールが待遠しくて(笑)。
  • ― そうそう、お聞きしたいと思っていたのですが、旅の資金はどうやって工面してらっしゃるんですか?
  • ○ 現地調達です。だいたい席亭さんにお願いして1局3000円の指導碁会をさせていただくんですけど、それが旅の資金になります。今のところ、それでやってだいたいトントンくらいですね。
  • ― すごい。「流し」みたいでかっこいいですね。皆さん、どんな反応なんですか?
  • ○ いろいろですね~。喜んでくださって、「また来てください」と言っていただけることもあれば、そもそも電話の時点でお断りされてしまうこともありますし。
  • ― そうか。最初に電話をするんですね。自分のことを知らない方に営業のお電話をするって大変そう。
  • ○ 最初は苦手でしたけど、もう慣れました(笑)。それに、電話が掛かればいい方です。多くの場合、電話が掛からないですから。
  • ― どういうことですか?
  • ○ すべての碁会所がHPを持っているわけではないので、ネットをいろいろ辿って碁会所の電話番号と住所を見つけ出して、グーグルのストリートビューで看板が出ているかを確認して、電話をしてみるわけですけど、もう閉じてしまっている場合がとても多いんです。情報を照らし合わせるとこの20~30年で8割の碁会所が無くなってしまったと思いますね。
  • ― ・・・。8割減のショックと、関三段が探偵をしていたショックでどうしていいのかわかりません。
  • ○ たしかに、碁会所探しは謎解きみたいですね(笑)。
  • ― 関三段にとって、旅の醍醐味は何ですか?
  • ○ 未知のものが見れることでしょうか。やっぱり、本当のところは行ってみないと何も分からないんだと思います。碁会所にいらっしゃる皆さまにはお一人お一人にいろいろなエピソードがあって、その土地の気候、産業、住んでいる方々の気質、どれも行くまで分からない。おもしろいですね~。
  • ― 旅の心得はありますか?
  • ○ なんだろう・・・。ありのまま話を聞くことでしょうか。
  • ― 関三段の旅は続きますか?
  • ○ 35歳まで続けたいと思っています。あと1年半くらいですか。
  • ― 35歳になったらやめてしまうんですか!?
  • ○ いや~。何となく35歳になったら体力的にもこれからの人生設計的にも難しいかなと思って(笑)。まあでも、まだ1年半あるので、それまでは旅を続けますよ。
記・編集K