昨年の4月から1年間にわたって放送された第68回NHK杯は、3月21日に決勝が放送され、一力遼二冠(天元・碁聖)の優勝で幕を閉じました。
一力二冠は2年ぶり2度目の優勝。昨年は竜星戦で3連覇(4期優勝)を果たし、若手棋戦のおかげ杯も制するなど、いわゆる「NHK杯方式」で争われる早碁でここ数年無類の強さを誇っています。そのため「早碁王」と呼ばれることもしばしば。
驚くべきはその勝率の高さです。一力二冠のNHK杯における通算成績は、24勝5敗(.8276)。初出場した第62回(2014年~15年)にいきなり決勝進出を果たすなど、毎年安定して勝ち上がっています。
負けた5局のうち、3局は決勝での敗戦で、残る2局はどちらも半目負け。トーナメント表にはタイトルホルダーや賞金ランキング上位者がずらりと名を連ねていることを考えると、圧巻の成績といえます。
ちなみに竜星戦の通算成績(本戦のみ)は33勝5敗(.8684)。枠抜け者で戦う優勝決定トーナメントに限れば17勝2敗(.8947)。こちらも凄まじい数字です。
早碁は通常の持ち時間の碁に比べて、読みの速さや正確さ、そして決断力が求められます。
昨年の竜星戦優勝後、早碁で好成績を収めている理由を尋ねてみたところ、「悩み過ぎずに決断できているのが良い結果につながっていると思う」と語った一力二冠。昨年は七大タイトルを二つ獲得して大きく飛躍しましたが、今後、早碁のタイトルをどこまで増やし続けるかにも注目です。(記・保田大地)
複数回優勝棋士のNHK杯通算成績(第68回まで)
棋士名 | 成績 | 優勝回数 |
---|---|---|
坂田栄男名誉NHK杯 | 62勝36敗(.6327) | 11回 |
大竹英雄名誉碁聖 | 59勝35敗(.6277) | 5回 |
依田紀基九段 | 62勝29敗(.6813) | 5回 |
結城 聡九段 | 71勝26敗(.7320) | 5回 |
趙 治勲名誉名人 | 76勝41敗(.6496) | 4回 |
張 栩九段 | 45勝16敗(.7377) | 4回 |
井山裕太三冠 | 43勝13敗(.7679) | 3回 |
二十四世本因坊秀芳 | 64勝32敗(.6667) | 3回 |
林 海峰名誉天元 | 49勝40敗(.5506) | 3回 |
橋本昌二九段 | 50勝31敗(.6173) | 3回 |
小林光一名誉棋聖 | 39勝34敗(.5342) | 2回 |
藤沢秀行名誉棋聖 | 43勝33敗(.5658) | 2回 |
橋本宇太郎九段 | 22勝31敗(.4151) | 2回 |
一力 遼二冠 | 24勝 5敗(.8276) | 2回 |