3月3日から5日にわたって行われた議政府国際囲碁新鋭団体戦は優勝・中国、2位・韓国、3位・中華台北、4位・日本という結果で幕を閉じた。出場資格19歳以下(2002年1月1日生まれ以降)。3人1組(男性2名、女性1名)の団体戦という形式から「ヒカルの碁」で進藤ヒカルが塔矢アキラらと出場した北斗杯のようだと話題になった本大会。結果は北斗杯同様、厳しいものだった。しかし、敗戦こそ学ぶことが多い。さっそく今大会の戦いを第1ラウンドから振り返っていこう。
第1ラウンド、対中華台北戦は波乱の幕開けとなった。出場予定の福岡航太朗三段が体調不良のため棄権となったのだ。日本チームは1人欠員の中戦うことになった。
結果は日本の1勝2敗。仲邑菫二段が林鈺娗初段に勝利し、三浦太郎二段は賴均輔七段に敗れた。三浦は優勢を築いていたが、勝利目前で「棋士人生の中で3本の指に入るくらいひどいミス」をしての逆転負け。勝ち星的にも精神的にも苦しいスタートとなった。
第2ラウンド、対中国戦からは福岡の代わりに酒井佑規三段が加わった。酒井は前日、手合の昼休憩中にオファーを受けたとのこと。急な話だったが「出たい棋戦だったので『出ます』と即答しました」という。
中国チームは日本ナショナルチームコーチの平田智也七段が「若手オールスター」というほどの手厚い陣容。実績十分の中国勢に押される中、仲邑が魅せた。周泓余六段に黒番1目半勝ちを収めるという快挙を成し遂げたのだ。周六段は主要な女子国際戦の1つ、呉清源杯で於之瑩六段に勝って優勝したことがある超強豪。13歳の仲邑がとんでもないポテンシャルを見せつけた。AIによれば14目ほどの劣勢を巻き返した大逆転だったようだ。本局について仲邑は「結果はよかったけれど、実力的にはまだ並べていないと思った」と冷静に振り返った。日本チームの成績は1勝2敗。
第3ラウンドは三浦、酒井が韓国の文敏鍾五段、韓友賑三段相手に優勢を築いた。局面は難しいもののAIの評価値は80%以上。本人たちも序盤は少し打ちやすいと感じていたようだ。しかし、秒読みに入ってからの正確さ、ヨミのスピードは韓国チームが一枚上手だった。ほんの少しのきっかけを逃さず、流れをつかむと一気に突き放し勝利。三浦、酒井が敗れ日本チームの最下位が決まった。仲邑は最後まで粘っていたものの、韓国の天才少女、金恩持二段(15歳)に敗れた。
本大会を振り返って思ったこと、課題は何か、また手ごたえを感じたことはあるかなどをそれぞれに聞いた。
- 仲邑「最後に負けてしまったのは残念ですが、結果はまあまあだったと思います。課題は序盤の、初めて見るような局面での対応力をもっと付けたいと思いました。手ごたえは、中国の周六段との碁は最後難しいヨセ合いだったのですが、そこで勝ち切れたのは自信になりました」。
- 三浦「1局目で詰碁のミスをして負けてしまったので、2局目の前にヨミの瞬発力を上げようと思って詰碁をたくさん解きました。ただ、今度は判断にミスがあって負けてしまいました。今大会を通じて特に差を感じたのは短い時間で正確に打つ力です。手ごたえは...ちょっと思いつかないです」。
- 酒井「オファーを受けた時、日本チームに貢献したいと思いました。2連敗という結果で力になれなかったのは申し訳ない気持ちです。課題を感じたのはヨミの精度と判断力です。(「酒井さんも混沌流でヨミが強い印象ですが」という記者の言葉に)もっと読める人はいくらでもいます。実力が全然足りませんでした。手ごたえは...、序盤はよかったと思います。今後はもっと中終盤の力をつける訓練をしないといけないと思いました」。
最下位という結果は残念だったが、敗戦は人を成長させる絶好の機会でもある。特に今回の出場者は全員伸び盛りの10代棋士。悔しさをバネに来年はより成長した姿を見せてくれるに違いない。
対局結果
優勝・中国(3勝)2位・韓国(2勝1敗)
3位・中華台北(1勝2敗)
4位・日本(3敗)
日本チーム1―2中華台北チーム
韓国チーム1―2中国チーム
日本チーム1―2中国チーム
韓国チーム3―0中華台北チーム
日本チーム0―3韓国チーム
中国チーム3―0中華台北チーム
対局概要
- 日本チーム
- 三浦太郎二段、酒井佑規三段、仲邑菫二段、(福岡航太朗三段)
- 韓国チーム
- 文敏鍾五段、韓友賑三段、金恩持二段
- 中国チーム
- 屠暁宇七段、王星昊六段、周泓余六段
- 中華台北チーム
- 賴均輔七段、徐靖恩四段、林鈺娗初段