つかみ取れ!中庸ドリーム~前回準優勝者、奥田あや四段に聞く中庸効果【コラム:品田渓】


 今年も中庸戦の季節がやってきた。SGW杯中庸戦には毎年ドラマがある。参加資格は日本棋院所属の31歳以上60歳以下、かつ七大棋戦、竜星戦、阿含・桐山杯、SGW杯中庸戦の優勝経験がないこと。棋士にとって棋戦優勝は特別な経験だ。第1回林漢傑八段、第2回黄翊祖九段、第3回金澤秀男八段、第4回潘善琪八段。それぞれ悲願の初優勝を果たして本棋戦を卒業していった。
 「初優勝」以外にもさまざまなドラマがあり、出場する棋士それぞれに熱い思いがある。奥田あや四段は昨年、中庸戦で準優勝の好成績をおさめ、好調の波に乗った。今年プロ棋士ペア碁選手権で佐田篤史七段と組んで優勝、女流立葵杯で挑戦者決定戦に勝ち進むなど躍進が目立つ。ミドルエイジの棋士たちが最も気合を入れて臨むといわれる中庸戦。その魅力と効果は何か、昨年の準中庸・奥田四段に話を聞いた。



SGW杯中庸戦を機に好調の波に乗った奥田あや四段

  • ―― 8月8日から中庸戦の予選が始まりました。昨年の準優勝を振り返って、今どのように思われますか?
  • 奥田)まさかそんなに勝てるとは思っていなくて、今考えても出来過ぎな結果です。
  • ―― 本戦で水間俊文八段金秀俊九段大垣雄作九段と実力者を破っての準優勝でした。
  • 奥田)形勢が悪く拾った碁もあったので、運に助けられた部分が大きいですが、この準優勝で自分でも頑張ればここまでいけるんだという自信がつきました。
  • ―― ペア碁優勝や立葵杯の挑戦者決定戦進出など、最近とても活躍されている印象があります。
  • 奥田)たしかに、中庸戦を境に自分の打ちたい手を自信を持って打てているように思います。私は今30代で、もう若手とは言えないなと思っていたのですが、唯一中庸戦では若手と言ってもいい年齢なんです!先輩方の胸を借りて思いっきり自由にのびのび打つことができ、その結果準優勝することができたことで、他の棋戦でも思い切り良く打てるようになったような気がします。
  • ―― 特に効果を感じた場面はありますか?
  • 奥田)今年の6月に女流本因坊戦で16年ぶりに謝依旻七段に勝てたのは大きかったです。謝さんとは入段同期なのですが、とにかくたくさん負かされていて、これまで16局打って1回しか勝ったことがありませんでした。なので2勝目を挙げられたのがすごく嬉しかったです。同時に今回のびのび打てたことで、今まで勝ちたい意識が強すぎて必要以上に力んでいた部分があったのかなとも思いました。
  • ―― 今年もまた中庸戦が始まりました。この棋戦は奥田さんにとってどんな棋戦ですか?
  • 奥田)特に気合が入る棋戦です。予選を抜けられればベスト16入り、しかも本戦で4局必ず打てる。強い相手と打てて勉強になるし、チャンスもある。すごく楽しみです。
  • ―― 昨年は準優勝。今年は優勝を狙っていますか?
  • 奥田)それはちょっと(笑)。まずは予選を抜けられるかです。私の予選は9月5日で初戦の相手が溝上知親九段ですから。
  • ―― それは・・・、強敵ですね。
  • 奥田)そうなんです。溝上先生には第3回中庸戦の本戦で負かされていて、その時以来の対局になります。それに、先ほど「中庸戦では私は若手です」と言いましたが、今年はさらに若手が入ってくるんです。
  • ―― 鈴木伸二七段寺山怜六段ですね。
  • 奥田)新たに中庸入りする人たちが強くて年々勝ち上がりが厳しくなりますが、まずは予選突破を目指して頑張ります!
  • ―― ありがとうございました。中庸戦の予選は10月3日までの毎週月曜日と8月25日(木)。全局「幽玄の間」でライブ中継されます。本戦は10月29日(土)、10月30日(日)です。最後にファンの方に注目ポイントをお願いします。
  • 奥田)中庸戦は早碁(1手30秒、1分の考慮時間10回)なので、展開が早くて面白いと思います。私も楽しんで打つので皆様も楽しんで観戦してください!
記・品田渓