「囲碁をやっています」というと「囲碁って、あのおじさんがやるやつでしょ?」という反応が返ってくることがある。しかし、実際には女性の囲碁愛好家はとても多い。藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流立葵杯、仲邑菫三段ら女性棋士が活躍する背景の一つに、もともと囲碁が女性の間で人気のある競技だということが関係しているだろう。各地で女性だけのアマチュア大会が開催されており、そのいずれもが会場いっぱいに女性で埋め尽くされるほどに盛況だ。
10月16日(日)、記者は「第8回女流アマ囲碁勝負美人杯」の取材で日本棋院・東京本院を訪れた。この大会は18歳以上の女性のための大会だ。2013年の第1回大会以来、毎年好評で2019年には400人規模となった。コロナ禍により2020年、2021年は中止したが、今年は規模を縮小し実施。120人の定員で呼びかけを行ったところ即いっぱいになったため、急遽定員を50人増やし、最終的に180人以上が会場に集まった。
3年ぶりの大会とあって、会場には高揚感があった。一般のアマ大会と趣を異にするのは参加者が全員大人の女性だからだろうか。お洒落で美しい装いの方が多い。素敵な帽子をかぶっていたり、着物を着ていたり、輝くブローチを付けていたり、この大会を楽しみにしていた気持ちが服装からも見てとれる。多くの人が友だちを誘って来ており、待ち時間には近くの席同士で会話が弾む。勝負の場であると同時に社交の場でもあるのだ。
以下、参加者の声を一部紹介しよう。
6級~10級戦に出場したSさんは新潟から参戦。「囲碁好きの夫に勧められて教室に通うようになりました。NHK杯を観るのが大好き。結果はともかく、楽しみたいです」。
1級~5級戦に出場のWさんも碁を覚えたきっかけは夫だった。「囲碁は人生をかけちゃうくらいに面白いです。主人は昨年亡くなったのですが、本当にいい置き土産をくれたと思っています」。
初段~三段戦に出場したKさんは着物を着ていた。「もともと夫とペア碁に出る時用に着物を買ったんです。コロナ禍でまだ出れていないのですが、今日はせっかくなので気合を入れてきました」。
チャンピオン戦に出場のHさんは「久しぶりだから行くしかない」と名古屋から参加。定員が先着順だったので間に合っているのかドキドキしながらこの日を待ったという。
年齢は18歳から80歳以上と幅広く、棋力もそれぞれ。しかし共通して久しぶりの大会を思いっきり楽しみたいという気持ちが伝わってきた。勝負を楽しむ淑女たちの晴れ舞台。もしこのコラムを読んでいるあなたが女性なら、来年参加してみてはいかがだろうか。もし男性なら、身近な女性にお勧めしてみてほしい。