急成長を続ける仲邑菫三段が女流2強の一角、上野愛咲美女流棋聖に挑む第26期ドコモ杯女流棋聖戦挑戦手合三番勝負が1月19日(木)に開幕する。上野が貫録を見せるのか、それとも仲邑が2強の間に割って入るのか。女流碁界の今後を占う大一番を前に、女流本因坊戦の観戦記者でもある首藤瞬八段に見どころを聞いた。
- ---- 上野女流棋聖VS仲邑三段、まずは両対局者について教えてください。
- 〇 上野女流棋聖は昨年の勝ち星ランキング1位(54勝20敗)。あれだけ勝てるというのは本当に実力がある証拠です。そして、中でも早碁が強い。一昨年に続き昨年の広島アルミ杯を連覇したのは尋常ではありません。男性を含めても早碁で上野女流棋聖に勝てる棋士はそうそういない。早碁の女王というべき存在です。
- ― 対する仲邑三段はいかがでしょうか。
- 〇 仲邑三段にはいつも驚かされます。昨年の勝ち星ランキングは上野女流棋聖、藤沢里菜女流本因坊に次いで3位(48勝22敗)。ただ勝つだけではなく、どんどん内容も良くなっていて、この成績が勢いだけではないことが明白です。
- ― どのようなところが強くなっていると思われますか?
- 〇 仲邑三段の一番の長所は逆転力だと僕は思っています。あきらめずにちょっとした隙を突く勝負勘と集中力。もともと抜きん出ていましたが、さらに磨きがかかりました。挑戦者決定戦で藤沢女流本因坊と戦った碁も逆転勝ちでしたが、あの安定感抜群の藤沢女流本因坊相手にそれができるのがすごいことです。序盤も格段に上手くなって、大きく出遅れることがなくなりました。
- ― 両者の三番勝負はどのような展開になるでしょうか。
- 〇 必ず乱戦になると僕は見ています。上野女流棋聖の代名詞は「ハンマー」。今まで何度もハンマーパンチを決めて大石を仕留めています。仲邑三段の戦い方は上野女流棋聖と性質が違いますが、同じく中央志向で力戦家。戦いになったときに、どちらが自分のやりたいことができるかが勝負の分かれ目になるのではないかと思います。
- ― ハラハラドキドキの展開になりそうですね。
- 〇 それはもう間違いないでしょう。あと、もう一つ、僕が注目しているのは序盤戦です。上野女流棋聖も仲邑三段も得意布石を持っています。お互いに得意布石があるということは、相手の出方がある程度予測がつくということ。おそらく両者共に相手に合わせた序盤研究をしてくるでしょう。相手の得意布石に乗るのかそれとも得意布石に持っていかせないような工夫をするのか、そのあたりにもそれぞれの個性が出るので注目です。
- ― 首藤八段はどちらに分があると見ていますか?
- 〇 実績の上では上野女流棋聖ですが、正直なところ僕は完全に五分の戦いだと思っています。早碁は運の要素も強いですし、チャレンジャーの方が力を発揮しやすい意味もある。仲邑三段の昨年の成長ぶりと碁の内容を見る限り、相当に肉薄した戦いになると思います。
記・品田渓