使う碁盤は19路、手合はオール互先。お兄さん、お姉さんと同じ、お母さん、お父さんと同じ、プロ棋士と同じ、本格的な碁盤で戦うのは3歳から6歳のまだ学校に行っていない子どもたちだ。
未就学児のための囲碁大会、第12回渡辺和代キッズカップが3月25日(土)日本棋院で開催され、3歳から6歳までの子どもたち、約100人が集まった。本大会を設立したのは囲碁愛好家の渡辺和代さん。幼少期に父からルールを習い、58歳で再び始めた渡辺さんは碁のおもしろさ、楽しさに我を忘れて夢中になったそうだ。設立の経緯を伺うと、ご自身が小さい頃に習った碁が大人になってかけがえのない趣味になったように、多くの子どもたちにも早くその楽しさを知ってほしい。いつしかそう願うようになり、キッズカップの設立を決意したのだと明かしてくれた。
キッズカップの設立にあたっては、そんなに小さい子に碁が打てるのか、ましてや19路盤で打てるのかといぶかる声も多かったそうだ。でも渡辺さんには「子どもには大人が思う以上の能力がある」と確信があった。「子どもは身近にいる大人が碁を打つ姿に憧れるもの。子どもが持つ可能性を広げるためにも、プロも使っている19路盤で対局させてあげたかった」と話す。もちろん、すべての子が最初から最後まで打ち切れるわけではない。むしろ、打てない子がほとんど。でも、スタッフに手伝ってもらいながら頑張る姿は一人前の勝負師だ。
キッズカップの会場の様子。約100人の子どもたちが集まった。
小さな子にこそ大きな盤で打つ喜びを。キッズカップ名物、19路盤オール互先対局。
子どもたちの対局を見守る渡辺和代さん。
3歳、4歳の子も参戦。
真剣な眼差しは一人前の勝負師!予選を勝ち上がった16人による本戦。
子どもたちの対局を見守る保護者の方に話を聞くと、「こんなにちゃんと座って碁が打てるなんて」「昨年は全敗だったけど、今年は1勝できたみたい」と成長を喜ぶ声がたくさん聞かれた。子どもたちの顔を見るとみんなとてもいい顔をしていた。大会をやりきった子どもたちの顔は充実感で輝いていた。中には悔し泣きしている顔もあったが、その泣き顔はたくましかった。たくさん勝って表彰された子どもたちの顔は自信に満ちていた。
「皆さんはこの大会に出るために頑張ってきました。その時間は宝物です。宝物は皆さんが大人になっても大事にしてください」。開会式で渡辺さんは会場にいる子どもたちに語りかけた。充実感、集中力、自信、悔しい気持ち、克己心・・・。多くの子どもたちにとって初めての大会となるこのキッズカップ。ここで得たいろいろな事は、一生楽しめる囲碁という趣味に加えて、きっとこれからの人生で役に立つ財産になるだろう。