「恩返し」のバトンでつないだ夢の100段突破―洪道場100段突破記念祝賀会【コラム:品田渓】


 一力遼棋聖芝野虎丸名人藤沢里菜女流本因坊らが学んだ名門「洪道場」は今年新たに2人の棋士(陳柏劭初段高山希々花初段)を輩出し、出身棋士は31人、累計段位は106段となった。
 7月15日、洪道場の出身棋士累計段位100段超えを祝して、東京都杉並区で「100段突破記念祝賀会」が行われた。洪道場を主宰する洪清泉四段は愛弟子たちに囲まれて終始笑顔だった。「22歳で日本に来て今年で20年。韓国から来た若造を信じて大切な子どもたちを預けてくださった方たち、洪道場を支えてくださった方たち、全員に感謝しています。教え子たちの中には一日中道場にいた子もいました。みんな本当にかわいい教え子たちです」。洪四段の温かい人柄をそのまま映したかのように、祝賀会の雰囲気も温かかった。




 洪道場がスタートしたのは2005年。道場生初の棋士は2009年にプロ入りした平田智也八段だ。洪四段は日頃「上の人から受けた恩は下の人に返しなさい」と口を酸っぱくして言っているという。そのため、平田八段は自分の後に続く後輩に惜しみなく教えてきたし、その後輩たちはさらにその下の後輩たちに同じように接してきた。洪道場が途切れることなく棋士を輩出し続ける名門であるのは「恩返し」のバトンをつないできたからなのだろう。

 祝賀会のラストには洪四段らによるカラオケ(栄光の架橋)にのせて洪道場が始まってから今日までの写真がスライドショーされた。今活躍する棋士たちの幼少期や、棋士にはならなかったけれど洪道場で学んできた多くの子どもたち。記者は洪四段の圧倒的な継続の力を感じて自然と頭が下がった。

 最後に、一力棋聖、芝野名人の言葉と、両者の名前を冠した大会の紹介をして終わろう。

 「一力遼杯仙台囲碁フェスティバル」が8月10、11日に宮城県仙台市の「河北新報社」で行われる。一力遼杯仙台囲碁フェスティバル | GOMARU

一力棋聖

「洪先生から最も影響を受けたのは『恩を下の世代に返す』という考え方です。自分自身、研究会などで意識しています。一力遼杯は地元、仙台で行う大きな大会。多くの方に囲碁交流を楽しんでいただきたいですし、仙台観光も楽しんでいただきたいです。私は9日の前夜祭に出席して、応氏杯の決勝のため中国へ発ちます。特に最近、地元の方々やファンの方々の声援が力になっていると感じています。わずかな時間ですが皆さまにお会いできることで、いい精神状態で決勝に挑むことができそうです」

一力遼棋聖

 なお、10日、11日は急きょ芝野名人と藤沢女流本因坊が一力棋聖の代役を務めることに決まったという。

 芝野名人の名前を冠した「虎丸カップ」は昨年第1回が行われた。そして今年は芝野名人の地元、神奈川県相模原市でさらにパワーアップして11月24日に行われる予定だ。

芝野名人

「洪先生は碁に関しては厳しかったけれど、遊びの時は優しかったです。よくボーリングやカラオケにも行きました。そういう真面目にやるべき時と遊びは分けるというのは影響を受けた部分です。洪先生に育てていただいたこと、また今まで道場を続けていただいたことに感謝しています。これからも元気でいて欲しいです」

芝野虎丸名人
記・品田渓