日頃から日本棋院を支えてくださっているファンの方への感謝を込めて「ファン感謝囲碁まつり2024」が11月24日に日本棋院東京本院で開催された。
今年は日本棋院東京本院所属棋士51人(理事を除く)が約200人のファンの方を迎え、盛大に行われた。
開会式で出演棋士が勢揃い。開会挨拶をする武宮陽光日本棋院理事長。
毎年盛りだくさんの内容で行われるこの「ファン感謝囲碁まつり」。今年も恒例の「おたのしみ囲碁講座」や「4面打指導碁」の他、好評を博した「スペシャル指導碁」、「ペア碁With棋士」等の企画が行われ、加えて「プラチナ指導碁」、「囲碁相談室」、「『棋士が選んだこの一手』解説会」等の新企画が盛り込まれ、一日ではすべて回りきれない程の充実した内容だった。
すべてのイベントをご紹介するのは冗長に過ぎる恐れがあるので今回新たに企画されたイベントを中心に内容をお伝えしたい。
プラチナ指導碁
一昨年の「ファン感謝囲碁まつり」から導入されて好評を博した「スペシャル指導碁」のライト版とも言える企画で、こちらはタイトル経験女流棋士との二面打ち指導碁である。前半は鈴木歩七段、後半は万波奈穂四段が担当した。
会場は日本棋院5階の「流水の間」。「幽玄の間」程ではないが序列が高い対局が行われる部屋で棋士でもそうそう対局できる部屋ではない。個室タイプの部屋で周りを気にせず、脚付碁盤で本格的な対局の雰囲気を味わっていただこうという趣旨だ。
置石が赤いユニークな指導碁。
鈴木七段の指導を受けたIさんの盤面が目を引いた。置石が赤い。「碁ザラシ」というアザラシのような顔を持つ碁石のようなマスコットを鈴木七段の許可をとり置き換えたものだ。
Iさんは日本女子囲碁リーグの「チーム若鯉」の推し活をしており、チームカラーのパーカーを羽織り、胸元には「TEAM若鯉親衛隊」のロゴが燦然と輝く。「推し」を聞いてみると「歩先生とあや先生(奥田あや四段)です」ということで今回この指導碁に申し込みをされた。自由に楽しむ新しい囲碁ファンの形を見せてくれたIさんだったが、指導碁の時は真剣そのもの。手を読む姿が棋士のような気迫を醸し出していたのが印象的だった。
鈴木七段は一週間前に名古屋で行われた女子囲碁リーグ第4Rのお土産、ういろうを指導碁を受けた人のために用意していた。さすがの心配りだ。
後半の万波奈穂四段の指導碁。
囲碁相談室
一人10分で囲碁の悩みをベテラン棋士に相談できるコーナー。前半は水間俊文八段、後半は泉谷英雄九段が担当した。ともに教室を運営しており、アマチュアの指導には定評のある棋士だ。
一人10分なので次々とアマチュアならではの多種多様な相談が持ち込まれる。その中の一人、四子の置碁の白の打ち方に悩むYさんに水間八段が答える。水間八段の口調はやさしく、聞いている側はプレッシャーを感じない。「アマチュアの方は一ヵ所にこだわることがありますね」と水間八段。一段落した場所を続けて打つから後手を引く、相手が強くなると説く。水間八段の「大局を見て打つのが置碁の白の極意です」の言葉に大きく頷くYさんだった。
「全局を見るようにしましょう」と水間八段。
後半担当の泉谷英雄八段。頼れる兄貴のような快活さで質問に答える。
「棋士が選んだこの一手」解説会
日本棋院創立100周年記念企画の一環で実施された、日本棋院100年の歴史で生まれたさまざまな名局の中から棋士が最も印象に残っている一手を選んで解説する「棋士が選んだこの一手」。若手からレジェンドまで、幅広い世代の棋士たちが選んだ味わい深い一手が日本棋院のウェブサイトに掲載されている。
2階大ホールで行われた解説会はこの「棋士が選んだこの一手」から自分たちの選んだ一手を解説するというもの。先に行われた「ポン抜き情報局inファン感謝囲碁まつり」に出演した河野臨九段、鶴山淳志八段、林漢傑八段、孫喆七段、奥田あや四段、星合志保四段、徐文燕二段、安田明夏初段ら豪華メンバーがそのまま出演した。
解説した棋士が次の解説者と聞き手を指名するという形で進められ、解説に徐二段、安田初段、聞き手に河野九段といった、普段見られない立場の指名が行われたりして和やかに進行した。
鶴山八段が選んだ「この一手」は藤沢秀行名誉棋聖と橋本昌二九段の対局で藤沢名誉棋聖が放った一手。知る人ぞ知る有名なサバキの手筋の一手だ。
なお、鶴山八段はこの棋譜を日本棋院に提出した後、高尾紳路九段に文句を言われたという。高尾九段が候補に考えていた棋譜とまったく同じでかぶってしまったのだ。結局、高尾九段が他の棋譜に変更して提出となった。
朝日新聞 橋本昌二・藤沢秀行 特別三番碁 黒 藤沢秀行八段(当時)―白 橋本昌二九段
人気棋士が揃った「棋士が選んだこの一手」解説会。
他にも恒例の「指導碁」や引き継いで行われた「ペア碁with棋士」、「スペシャル指導碁」、各棋士イラスト付き「オリジナル名刺」のお渡し等、囲碁ファンと棋士の距離を縮め一体となって楽しめる内容になっている「ファン感謝囲碁まつり」。約200人集まった囲碁ファンは大いに盛り上がり、会場は温かい雰囲気に包まれていた。
来年もまた盛りだくさんの内容で囲碁ファンを迎えてくれるだろう。楽しみにしていたい。
今年も行われたイラスト付き「オリジナル名刺」。出演棋士51名すべての名刺を揃えた猛者もいた。