謹賀新年「チームつるりん」座談会(前編)―棋道山の頂上にそびえる「タイトル城」とその手前にある「つるりんの壁」とは?「つるりん式観る碁のすすめ~こぼれ話」


謹賀新年「チームつるりん」座談会(前編)―棋道山の頂上にそびえる「タイトル城」とその手前にある「つるりんの壁」とは?




 明けましておめでとうございます!
 週刊碁連載中の「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」で書ききれなかったこぼれ話を紹介する本コラム。今回は新年1回目ということで、「チームつるりん(つる、りん、編集P、編集K)」で座談会をしました。最初は2022年の観る碁のポイントなどを話し合う予定でしたが...


【座談会メンバー】

  • つる鶴山淳志八段 熊本県出身。サイクリングとキャンプが大好きな3児の父。超攻撃的な棋風から「肥後の暴れ馬」の異名あり。
  • りん林漢傑八段 鈴木歩七段の頼れる夫で2児の父。アクション芸と顔芸とボルダリングが得意。棋風はクール。
  •  P = 編集P ユーチューブ「つるりんチャンネル」の編集担当。棋力はたぶん初段くらい。自然豊かな埼玉の奥地に住んでいる。ほんの少しトトロ感が漂うアラサー男性。
  •  K = 編集K 週刊碁「つるりん式観る碁のすすめ~四字熟語編」の編集担当。棋力は六段。中学生の頃、地元の公民館にテスト勉強をしに行ったら、子ども体験教室のお迎えに来たお母さんと間違われた経験あり。今やっと見た目に年齢が追い付いてきたアラサー女性。

  • (つる)  2021年は井山(裕太五冠)さんの年だったよね。五冠っていうのもすごいけど、農心杯での4連勝には本当にしびれた。
  • (りん)  まさに圧倒的。今年2月の第3ラウンドが楽しみだよね。今までも強過ぎで「魔王」って呼ばれてたけど、今の強さは「大魔王様」かもしれない。
  • (つる)  井山さんの他となると、やっぱりせきこう(関航太郎天元)がすごかったよね。まさか一力(遼九段)さんからタイトル取っちゃうとは...。
  • (りん)  ほんと、まさか取るとは思ってなかった。っていうか、一力さんと虎ちゃん(芝野虎丸九段)が無冠っていうのが信じられないよ!
  • ( P )   僕、芝野先生の大ファンなんで、ほんと悲しいっす。
  • ( K )   私は一力先生が大好きなので、肩書きが九段とか...、いまだに現実のことだと受け入れられないです。
  • (つる)  気持ちは分かるけど(笑)。大丈夫! 絶対に2人ともすぐに復活するから!
  • ( K )   本当ですか?
  • (りん)  間違いないでしょ。2人ともめちゃくちゃ強いのははっきりしてるんだから。
  • ( K )   信じます!!!
  • (つる)  まあ、今年も井山さんと令和三羽烏(許家元十段、芝野虎丸九段、一力遼九段)の戦いは続くよね。そして、新たなスター、関天元が加わってどうなるか...。去年の彼みたいにグイっとくる若手がいると面白いんだけど。
  • ( P )   僕の「推し」は大西竜平七段です!
  • (つる)  ほほう。どうして?
  • ( P )   碁のスケールが大きいし、カッコいいじゃないですか!
  • ( K )   そう、そうですよね!囲碁フォーカスで改めて思いました。大西七段ってめちゃくちゃイケメンですよね(大西七段はEテレの囲碁フォーカスで講師を務めています)。
  • (つる)  イケメンは正義(笑)。でも、たしかに竜平くんはそろそろブレイクしてほしいよね。
  • (りん)  あと、あまるくん(余正麒八段)とかね。
  • (つる)  2人ともあと一歩でブレイクしそうなんだけどなぁ。
  • (りん)  ただ、その一歩がすごく大変なのも、これ真実なのよねぇ...。
  • (つる)  ホントにそう。我々だってあと一歩と思い続けて早10年、いや、もっとか? とにかく、もがいてるけど、なかなか前に進まないもんね...。(PとKを見て)2人とも、我々が弱いと思ってるでしょ!
  • ( P )   思ってないっすよ!威厳は確かにあんまりないっすけど、強いのは知ってるっすよ!
  • ( K )   つるさんは本因坊リーガーだし、りんさんだって名人リーグに2度も入っていますよね。ちゃんと強いって思ってますよ!
  • (つる)  ありがとう(涙目)。だからね、我々も一応、ちゃんと少しでも上にいけるように頑張ってるのよ。でも、リーグ入りしたとして、そこから先に進まないの!
  • (りん)  心の叫び(笑)。まあ、我々も努力してるけど、周りもみんな努力してるからね...。「つるりんの壁」って知ってる?
  • ( PK ) つるりんの壁??
  • (りん)  今から我々が置かれている状況を説明するからよく聞いてね。(咳払い)とある山、仮に棋道山としましょう。その山の頂上には「タイトル城」がそびえ立っています。
  • ( K )   棋道山?? タイトル城???
  • (りん)  まあ、いいから(笑)。その棋道山を我々含め、棋士全員が登っています。
  • ( P )   「タイトル城」のタイトルって、七大棋戦のタイトルっすか?
  • (りん)  まあ、そうだね。
  • ( K )   その「タイトル城」に入城できるのはタイトル保持者だけですか?
  • (つる)  いや~、タイトル保持者は城の玉座に座ってるって感じかな。
  • (りん)  そうそう。城にはタイトルに絡める人がいるって感じ。入城するには、挑戦してもおかしくないとみんなに思われるくらいの実力が必要ってことね。
  • ( K )   なるほど...。ちなみに、その棋道山の標高ってどのくらいですか?
  • (りん)  たぶん、ヒマラヤ山脈と同じくらいかな。
  • ( K )   標高8000メートル級かぁ。高いですね。
  • (つる)  それはもうめちゃくちゃ高いよ。
  • (りん)  それで、その棋道山は富士山のようにキレイな三角形です。高くなればなるほど空気が薄くなって、一歩がとっても重くなります。さて、何が起こるでしょう?
  • ( P )   みんな上を目指してる。ピラミッド型になっていて、上に行けば行くほど歩くスピードが落ちる、となれば、どこかで渋滞が起こりそうっすよね。
  • (りん)  その通り! だいたい6合目、5000メートル付近から息が苦しくなるのよ。
  • ( P )   ほんとに登山じゃないすか(笑)。ていうか、普通の人なら3000メートルでも高山病になりますよ。
  • (りん)  まあ、そこは我々、プロの登山家だから(笑)
  • (つる)  ちょっとちょっと、ウソはだめよ。実際の山登りは筑波山レベル(笑)!
  • ( K )   それならアマチュアでも楽しく登れそう(笑)
  • (りん)  まあ、棋道山においてはプロの登山家ってことだから(笑)。それで、話を戻すと、6合目から渋滞が始まって、それが頂上少し手前、8合目くらいまで続くのよ。8合目より先は心技体そろった選ばれし者しか進めないから密って感じではなくなる。さて、その人でぎゅうぎゅうの6~8合目をドローンか何かで引きで見たら、何に見えるでしょう?
  • ( P )   ...壁っすか?
  • (りん)  そう!そしてその壁にいつもいる我々の名前を取って...
  • ( K )   ...つるりんの壁。
  • (つる)  そういうこと!


りんの脳内イメージ

後編では「つるりんの壁」の内部で起こるあれこれについて語ります。

記・編集K