昨年のプロ碁界は、3度目の大三冠を達成した井山裕太棋聖と令和三羽ガラス(芝野虎丸王座、一力遼天元、許家元八段)の4強を中心に回っていたといっても過言ではないでしょう。
2021年以降、井山+三羽ガラスの勢力図に割って入りタイトル戦線を盛り上げるのは誰か。いくつかのデータを元に、記者目線で勝手に予想してみます。(記・保田大地)
その1 ~第五の男~(通算勝率編)
毎年コンスタントに好成績を収めている棋士は、当然ながら本戦やリーグ戦で活躍する率が高くなります。
2020年の勝率ランキング第1位は、「.8030」(53勝13敗)の一力遼天元でした。
では、生涯通算勝率の上位はどのような顔ぶれかというと、じつは7割を超えている棋士は昨年末の時点でたったの5人しかいません。
第1位 | 一力 遼 天元 | .7250(398勝151敗) |
第2位 | 芝野虎丸 王座 | .7227(258勝99敗) |
第3位 | 許 家元 八段 | .7222(273勝105敗) |
第4位 | 井山裕太 棋聖 | .7163(717勝284敗) |
ここまでは現碁界の4強と一致します。さて、もう一人の7割越えは誰でしょう。
それは・・・・・・
第5位 | 大西竜平 七段 | .7125(171勝69敗) |
期待の若手棋士、大西竜平七段がランクインとなりました。
大西七段は2015年入段の20歳。現在進行中の第76期本因坊戦リーグで奮闘するなど、活躍の舞台を着実に上へと移しています。
番碁に登場する日も近いのではないでしょうか。
一方で、通算勝率という数字には、どうしても若手棋士が有利になってしまう傾向があることも否めません。
長年にわたって本戦や挑戦手合で強敵と戦い続ければ、高勝率をキープするのが難しくなります。
20代の頃までに限れば勝率7割を越えていたというベテラン棋士は少なくありません。
ちなみに、通算対局数が1000を超える棋士に限定して集計すると、井山棋聖に次ぐ第2位には、平成四天王(山下敬吾九段、張栩九段、羽根直樹九段、高尾紳路九段)を抑えて「.6886」(860勝389敗)の河野臨九段が入ります。
河野九段は現在、第45期棋聖戦七番勝負で井山棋聖に挑戦中です。
井山棋聖が史上最多の9連覇を達成するのか、それとも挑戦者の河野九段が初の棋聖位に就くのか。今後の囲碁界を占ううえでもシリーズの行方から目が離せません。