本因坊戦第7局 天下分け目の七夕決戦~連覇記録VS年少記録【コラム:品田渓】


 本因坊文裕(=井山裕太九段)に芝野虎丸王座が挑戦している第76期本因坊戦7番勝負の最終第7局は7月6日(火)、7日(水)に山梨県甲府市の「常磐ホテル」で打たれる。

 「鉄壁の大三冠が崩れるのか」。第2局から第4局で文裕が3連敗した時、そう思った人も多いだろう。ところが、文裕は第4局直後に行われた中国甲級リーグで世界のトップ棋士、謝科九段を撃破し勢いをつけると第5局、第6局と充実の内容で勝利、決着を第7局に持ち込んだ。

 時の第一人者に気鋭の若手が挑む、それが最終局までもつれ込んだ。その構図だけでもワクワクするが、今回はここに大記録が2つもかかっていることで、まさに「歴史的な重要対局」となった。

 その大記録の1つは、二十五世本因坊治勲の10連覇に文裕が並ぶか、というもの。そしてもう1つは二十四世本因坊秀芳の本因坊最年少獲得記録、22歳10カ月を芝野(21歳7カ月)が破るか、である。この本因坊最年少獲得記録は実に50年破られていない。

 文裕は棋聖9連覇(最多、更新中)、碁聖6連覇(最多タイ)、天元5連覇(最多タイ)の連覇記録を持っている。そして、芝野は名人(19歳11カ月)、王座(20歳0カ月)、十段(20歳7カ月)の最年少獲得者だ。言うならば、今シリーズは「ミスター連覇記録」VS 「ミスター最年少記録」の戦いなのだ。

 どちらが勝っても歴史が動く、天下分け目の最終第7局は7月7日夜に終局の見込み。七夕の日に、どちらの願いが星に届くのか。それぞれのファンもそれぞれの思いを胸に、熱戦を見守ることになる。

 対局については「毎日新聞」、 「日本棋院囲碁チャンネル」の映像ライブ配信(1日目2日目)、およびネット対局「幽玄の間」等にてご覧いただけます。
 また詳細・解説については「毎日新聞」の観戦記、毎週月曜日発売の「週刊碁」、 毎月20日発売の月刊誌「碁ワールド」等にてご覧いただけます。


棋戦連覇記録

連覇 棋士名 棋戦 期間
1 10連覇 趙  治勲 本因坊戦 1989年(平成元年)44期~1998年(平成10年)53期
2 9連覇 高川  格 本因坊戦 1952年(昭和27年)7期~1960年(昭和35年)15期
2 9連覇 謝  依旻 女流名人戦 2008年(平成20年)20期~2016年(平成28年)28期
2 9連覇 井山 裕太 本因坊戦 2012年(平成24年)67期~2020年(令和2年)75期
2 9連覇 井山 裕太 棋聖戦 2013年(平成25年)37期~2021年(令和3年)45期
6 8連覇 小林 光一 棋聖戦 1986年(昭和61年)10期~1993年(平成5年)17期
6 8連覇 加藤 正夫 王座戦 1982年(昭和57年)30期~1989年(平成元年)37期
8 7連覇 小林 光一 名人戦 1988年(昭和63年)13期~1994年(平成6年)19期
8 7連覇 坂田 栄男 本因坊戦 1961年(昭和36年)16期~1967年(昭和42年)22期
8 7連覇 坂田 栄男 日本棋院選手権戦 1955年(昭和30年)2期~1961年(昭和36年)8期
8 7連覇
大竹 英雄 日本棋院第一位決定戦 1967年(昭和42年)6期~1968年(昭和43年)7期
全日本第一位決定戦 1970年(昭和45年)1期~1975年(昭和50年)5期
12 6連覇 藤沢 秀行 棋聖戦 1977年(昭和52年)1期~1982年(昭和57年)6期
12 6連覇 大竹 英雄 碁聖戦 1980年(昭和55年)5期~1985年(昭和60年)10期
12 6連覇 小林 光一 碁聖戦 1988年(昭和63年)13期~1993年(平成5年)18期
12 6連覇 井山 裕太 碁聖戦 2012年(平成24年)37期~2017年(平成29年)42期
12 6連覇 謝  依旻 女流本因坊戦 2007年(平成19年)26期~2012年(平成24年)31期
17 5連覇 趙  治勲 名人戦 1980年(昭和55年)5期~1984年(昭和59年)9期
17 5連覇 石田 芳夫 本因坊戦 1971年(昭和46年)26期~1975年(昭和50年)30期
17 5連覇 林  海峯 天元戦 1989年(平成元年)15期~1993年(平成5年)19期
17 5連覇 井山 裕太 天元戦 2015年(平成27年)41期~2019年(令和1年)45期
17 5連覇 島村 俊廣 王冠戦 1960年(昭和34年)6期~1965年(昭和40年)10期
17 5連覇 羽根 直樹 王冠戦 2011年(平成23年)52期~2015年(平成27年)56期
17 5連覇 伊田 篤史 王冠戦 2016年(平成28年)57期~2020年(令和2年)61期
17 5連覇 伊藤 友恵 女流選手権戦 1957年(昭和32年)6期~1962年(昭和37年)10期
17 5連覇 謝  依旻 女流棋聖戦 2013年(平成25年)16期~2017年(平成29年)20期
17 5連覇 藤沢 里菜 女流立葵杯 2017年(平成29年)4回~2021年(令和3年)8期
継続中  ※ 日本棋院第一位決定戦は7期までで終了。全日本第一位決定戦に発展。

現行七大タイトル棋戦別最年少獲得記録

棋戦名 棋士氏名 生年月日 獲得時年齢 獲得日
棋聖 井山裕太 1989/5/24 23歳9ヶ月 2013/3/15
名人 芝野虎丸 1999/11/9 19歳11ヶ月 2019/10/9
本因坊 石田芳夫 1948/8/15 22歳10ヶ月 1971/6/23
王座 芝野虎丸 1999/11/9 20歳0ヶ月 2019/11/30
天元 井山裕太 1989/5/24 22歳5ヶ月 2011/11/18
碁聖 許家元 1997/12/24 20歳7ヶ月 2018/8/4
十段 芝野虎丸 1999/11/9 20歳7ヶ月 2020/6/27
※ 獲得日は対局終了日の翌日
※ 以下、芝野虎丸王座が本因坊奪取の場合
本因坊 芝野虎丸 1999/11/9 21歳7ヶ月 2021/7/8

第7局陣容

タイトルホルダー 本因坊文裕(棋聖・名人・本因坊)
挑戦者 芝野虎丸王座
立会人 片岡聡九段
新聞解説 趙善津九段
記録 常石隆志四段豊田裕仁初段
大盤解説→中止→映像解説 解説:孫喆七段、聞き手:木部夏生二段
幽玄の間解説 内田修平七段
日本棋院囲碁チャンネル 解説:孫喆七段、聞き手:木部夏生二段、他

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