武士の誇りを賭けた<復讐>を描く感動のリベンジエンタテイメント、映画『碁盤斬り』(監督・白石和彌、脚本・加藤正人、主演・草彅剛)が5月17日(金)に封切られたのを機に、囲碁のシーンをもっと楽しむための予備知識を紹介している。前編では囲碁監修・高尾紳路九段による囲碁基礎知識講座として、囲碁に興味を持たれた方向けに、大まかに囲碁がどのようなゲームなのかを説明した。後編では高尾九段が監修を行う上でこだわったことや大変だったことなど、映画の舞台裏を聞いていく。
©2024「碁盤斬り」製作委員会)
- ― 今回は囲碁監修の舞台裏について伺いたいと思います。まず、高尾九段はどのような経緯で監修を行うことになったのでしょうか。
- ◯ あれは確か5年前だったでしょうか。私は脚本の加藤正人さんと親しくさせていただいているのですが、いつものように飲んでいたら、加藤さんから「囲碁が出てくる映画を作りたいと思っている。その時は力を貸して欲しい」と声をかけていただいたんです。
- ― 5年前ですか。3年半かけて脚本を改訂したと聞きましたが、高尾九段は加藤さんから脚本に着手する前に依頼を受けていたのですね。
- ◯ 飲んでばかりで記憶が曖昧なのではっきりした日時は覚えていないですが(笑)、コロナ禍前だったのは確実なので、たぶんそうです。
- ― 囲碁監修とはどのようなことをするのですか。
- ◯ 加藤さんから脚本を渡されて、囲碁が出てくるシーンに合った棋譜を用意するのが仕事です。セリフ通りの盤面を用意するのがなかなか大変で、どうしても用意できずにセリフの方を変更していただいたこともありました。盤面とセリフを一致させるのは骨の折れる作業で、これは加藤さんでなければできなかったことだと思います。
- ― 映画を拝見して、セリフと盤面の配石が見事に合っていて、何の違和感もありませんでした。その裏には高尾九段と加藤さんのタッグがあったのですね。ところで、使用する棋譜は高尾九段が全て作られたのですか。
- ◯ いえ、ここがこだわったところなのですが、できる限り実在する棋譜、それも江戸時代の棋譜を使いました。有名な方の棋譜なので、映画を観て「ああ、あれか!」と分かる方もいるかもしれません。
- ― 江戸時代の棋譜を使う上で大変だったことはなんですか。
- ◯ ちょうどセリフに合った盤面を探すのが一番大変でした。セリフを変更してもらったこともありますし、自分ではどうしても見つけられなくて友人の河野臨九段に相談したこともありました。
- ― リアルな盤面にはそのような背景があったのですね。もう一つ、映画の中で象徴的に出てくる手筋があります。あれはどうしてその手筋にされたんですか。
- ◯ あれはですね、実は5年前に加藤さんから「この手筋の死活を用意して欲しい」と頼まれたんです。
- ― そうなんですか!?いろいろな手筋がある中で、なぜこの手筋なのだろうと思ったのですが、初めからその手筋を使うと決めていたとなると、秘めた意図がありそうですね。
- ◯ 映画で使われた死活もちゃんと江戸時代の書籍から取っています。
- ― 江戸時代の書籍というと『碁経衆妙』ですか、それとも『囲碁発陽論』・・・。
- ◯ それは秘密です。ぜひ映画館で答え合わせをしてください。
記・品田渓
『碁盤斬り』
5月17日(金)TOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
- 出演
- 草彅剛
清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親
斎藤工 小泉今日子 / 國村隼 - 監督
- 白石和彌
- 脚本
- 加藤正人
- 音楽
- 阿部海太郎
- 公式HP
- https://gobangiri-movie.com