来る中庸戦!熱きミドルエイジの戦い(第1部)~中庸戦の魅力「つるりん式観る碁のすすめ」


 世間の荒波に揉まれ、酸いも甘いも知り尽くしたミドルエイジ棋士たちが今秋もやってくる。つる&りんを含め一部のマニアにはたまらない「通」な棋戦、第7回SGW杯中庸戦の本戦が11月2、3日に開催されます!
 出場資格は31歳以上60歳以下かつ七大棋戦等の優勝経験がない棋士。トップや若手、ベテランと様々なものに挟まれたミドルエイジには、どんな世界でもいつの時代でも中庸の精神が求められるものです。真の中庸は誰なのか。自身も「中庸」であるつること鶴山淳志八段が中庸戦の楽しみ方をレクチャーしてくれます。第1部では中庸戦の魅力をイチから解説していただきましょう!


つる = 鶴山淳志八段
しな = 品田渓(ライター)

  • しな つる先生が5代中庸になられてから2年が経とうとしています。
  • つる 暑い夏が遠くなって、お鍋が美味しくなると「そろそろ中庸戦」と思いますね。
  • しな 今回も恒例の選手紹介&優勝予想をしていただきたいのですが、その前に今年はじめて中庸戦を観る方に向けて、中庸戦とはどんな棋戦なのかを教えてください。
  • つる 中庸戦はひとことで言うと、熱くて、渋くて、噛めば噛むほど味があって、面白くて、通な棋戦です。
  • しな あの、ひとことで言えていません(笑)。
  • つる 失礼しました。魅力があり過ぎてつい・・・。まず押さえておきたいのは、この棋戦の出場棋士は全員中年で七大棋戦などのタイトルを獲得したことがないんです。つまり、スターではないんです!
  • しな スターではない。
  • つる しかしよく考えてください。ほとんどの人はスターでないように、ほとんどの棋士はスターではありません。1人のスターが生まれるには100人の実力者が必要なんです。そして、我々はまさにそういう存在。スターのように輝いてはいないがいい仕事はできる。ドラマや映画の主人公を取り巻く実力派俳優のような存在なんです。
  • しな なるほど。ドラマや映画でも主人公ではなく、脇役の俳優さんの演技力や味について語れる人の方が「通」な感じがしますね。
  • つる そういうことです。一力遼棋聖芝野虎丸名人井山裕太王座、もちろん素晴らしいです。でもここであえて中庸戦を語ることでみなさんも一気に「通」になれます。
  • しな 「通」になりたいです。よろしくお願いします!
  • つる では今大会の見どころに入る前に棋戦の概要を確認しましょう。本棋戦は31歳以上60歳以下かつ七大棋戦等で優勝経験のない無冠のミドルエイジ棋士が対象です。予選を勝ち抜いた16人が本戦で4回のリーグ戦を行います。持ち時間はNHK杯と同じ、1手30秒で1分の考慮時間が10回あります。
  • しな リーグ戦で早碁なんですね。
  • つる そうです。初戦で負けてしまっても入賞の可能性があるので、選手たちはどのラウンドでも最後まで必死に戦います。あと、本棋戦は優勝すると卒業になるんですね。なので、連覇はないんです。誰が勝っても初優勝です。
  • しな 熱気がすごそうですね。
  • つる まさに。本棋戦では全員口には出さなくても「優勝できるかも」と思っているんですね。私も優勝した年は口では「私なんて」といいつつ、狙っていました(笑)。正直なところ、スター選手がいるトーナメント戦だと優勝できるとは自分でも思えません。でも、スター選手がいませんから、全員が本気で優勝を目指して頑張ります。
  • しな 出場選手たちの本気度の高さが伝わってきました。この「通」な中庸戦はどのようにしたら観戦できますか?
  • つる 観戦の方法は3つです。まず、優勝決定戦は大盤解説会が行われます。昨年優勝の志田達哉八段吉原由香里六段の解説です。11月3日(日)14時から、日本棋院2階大ホールです。無料で予約も必要ありませんので、ぜひお気軽にお越しください。
  • しな 志田八段の解説!めったにないことですよね?私は志田八段のファンですが、昨年の中庸戦の優勝インタビューではじめて生の声をお聞きしました。
  • つる 前年の優勝者が解説するという伝統があるので、このレアな解説が実現しました。志田くんは私のように会いに行ける棋士じゃないんです。何しろ今でも携帯無しの生活をしている天然記念物ですから。はっきり言って伝説級なのでぜひ足を運んでいただきたいです。
  • しな 他にはどんな方法があるでしょうか。
  • つる 2日目からは日本棋院囲碁チャンネルにてユーチューブ解説があります。また、1日目から見たいという方は対局サイト「幽玄の間」で棋譜中継があります。早碁なのでどんどん進みますし、面白い組み合わせがたくさんあるのでぜひこちらもご覧いただきたいです。

第2部に続く

記・品田渓


昨年行われた第6回SGW杯中庸戦は志田達哉八段が優勝!今年は志田八段が優勝決定戦の大盤解説を担当する。