毎年恒例の「ファン感謝囲碁まつり」が今年も9月24日に日本棋院・東京本院で開催された。
日頃から日本棋院を支えてくださっているファンの方への感謝を込め、日本棋院所属棋士60人(理事を除く)が約200人のファンの方を出迎えた。
当日は全館が「ファン感謝囲碁まつり」一色になる。各階で異なるイベントが行われ、どこに参加するのも自由だ。
「3面打ち指導碁」や「囲碁講座」といった定番の企画から棋士とペアを組んでペア碁を行う「ペア碁with棋士」や棋士とファンが一緒に各種ゲームで競う「ポン抜き情報局inファン感謝囲碁まつり」といった変わり種、一流棋士と「幽玄の間」で一対一の指導碁が受けられる「スペシャル指導碁」といったプレミアム企画まで多種多様だ。
「スペシャル指導碁」は5万円で抽選に申し込まないと受けられないが、その他は一律3000円(会員前払の場合)で巡ることができる。
「囲碁講座」と2階大ホールで行われた「ポン抜き情報局inファン感謝囲碁まつり」は出入り自由なので、「指導碁」や「ペア碁」と組み合わせてどこを巡ろうかと考えるだけでも楽しい。
「3面打ち指導碁」と「囲碁講座」は多くのファンの方にとって馴染みのある企画だろうと思う。
そこで、ここでは「ファン感謝囲碁まつり」ならではの企画、「スペシャル指導碁」、「ペア碁with棋士」、「ポン抜き情報局inファン感謝囲碁まつり」に焦点を当てて、その内容と参加された方の声をご紹介していきたい。
スペシャル指導碁
昨年のファン感謝囲碁まつりから導入された企画で、好評につき今年も行われることになった。
今年の指導棋士は張栩九段と山下敬吾九段。
「幽玄の間」で一対一の指導碁を受けられる。
ファンの方にとっては両棋士が数々の名勝負を繰り広げてきたその場所で自分を待ち構えているというのはたまらないことだろう。
張九段の指導を受けたWさんは「ちょうど碁を覚えてのめり込んでいた時に張九段が頂点に君臨していてファンになった」という。
張九段の詰碁も熱心にやり込んでおり、局後の検討では「とても力が強くて読めていますね。詰碁の成果が出ています」と褒められた。
「私の手にも結構考えてくださっていて、それが嬉しかった」とWさん。対局が終わると晴れやかな表情で他ブースに向かっていった。
ペア碁with棋士
棋士とペアを組んでのペア碁対局。基本ルールは通常のペア碁と同じだが、2回の相談タイムがあり、ここぞという場面で棋士と相談できる(一方が相談タイムに入るともう片方は後ろを向いて見ないようにする)。
相談タイムを巡っては、三村芳織三段がペアの方と入念に相談している間、後ろを向いて待機していた対戦ペアの大矢浩一九段が「潰しにこようとしてるじゃない」とボヤいたり、「相談タイムを早くに使ってしまったのに相手はまだ残っていてどうしよう」とペア同士で顔を見合わせたりとドラマがあった。
下坂美織三段とペアを組んでいたSさんは「とても勉強になった。
言葉で説明してもらっているわけではないけれど、一手一手こう打つんだよと指導してもらっている感じがした」と満足そうな表情。
その下坂三段‐Sさんペアの相手、水間俊文八段は対局の棋譜を付けてペアの方にプレゼント。
水間八段の粋なはからいにペアの方も嬉しそうだった。
ポン抜き情報局inファン感謝囲碁まつり
こちらは2階の大ホールで行われた人気棋士によるイベント。
高尾紳路九段、張栩九段、河野臨九段、鶴山淳志八段、林漢傑八段、孫喆七段、横塚力七段、木部夏生三段、星合志保三段、森智咲二段、五藤眞奈初段、安田明夏初段という豪華なメンバーが二手に分かれて対抗戦を行った。
対抗戦といっても碁の対抗戦ではなく、クイズの対抗戦。
盤面の形勢がどうなっているかを当てる「フラッシュ形勢判断」、過去の棋譜を再生させていき、対局者名と棋戦名を当てる「棋譜イントロ・ドンッ」など碁の知識と実力が試されるものと、お題に出たものの絵を制限時間内に描く「お絵描き対抗戦」の二本柱で行われた。
圧巻だったのは「棋譜イントロ・ドンッ」での高尾九段の強さだ。棋譜は七大タイトル戦に限っても毎年約40局ずつ増えていく。
その上、新聞棋戦がスタートする以前にも呉清源九段の打ち込み十番碁が、そのもっと前には江戸時代の棋士による「お城碁」がある。
つまり、クイズに出される可能性がある棋譜はざっと数千局はあるということ。それを序盤の早い段階でバシバシと当てるとは・・・。
自分の碁でさえも1日経つと忘れてしまう記者には神業にしか見えなかった。
他に特筆すべきは今回初の試みとして、QRコードをスマホで読み込むと棋士と同じ問題に参加できる技術を取り入れたことだろう。
システムトラブルなど今後、改善が必要なところはあったが、全体としては好評だった。
「囲碁であそぼ」のアプリでルールを覚えたというMさんは「初心者でも参加しやすかった」という。
スマホで押すだけという手軽さが良かったようだ。一方で普段からQRコードに親しんでいない方にはとっつきにくさもあった。
読み込みがうまくいっていない方へのサポートは今後の課題だ。
昨年も行われた恒例の「お絵描き対抗戦」はやはり、というべきか、囲碁クイズとのギャップがものすごかった。
「棋譜イントロ・ドンッ」で神業を披露していた高尾九段も「くまモン」の耳を尖らせてどう見てもブタにしか見えない絵を描き、河野臨九段のくまモンは耳が4つあり、MCの木部夏生三段に指摘され「今、気が付きました(苦笑)」とコメント。
観客からは悲鳴にも似た笑いが起きた。前述のMさんは「NHKのお二人(星合三段と安田初段)は『どーもくん』をもう少し頑張らないと(笑)」とダメ出し。
来年、伸びしろしかない画伯たちの発奮を期待したい。
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