9月8日(日)の夜、日本棋院の2階は爆発したかのような歓声に包まれました。そうです、一力遼三冠が第10回応氏杯世界選手権の決勝五番勝負で中国の謝科九段を3―0で破り、19年ぶりに日本へ優勝をもたらしたのです!!!
世界戦優勝は日本囲碁界の悲願中の悲願。あまりの喜びと感動に、ここ最近「観る碁委員会」の活動が少々お留守になっているつる(鶴山淳志八段)とりん(林漢傑八段)が動き出しました。
つる = 鶴山淳志八段
りん = 林漢傑八段
- りん つるさーん(ハグしようとする)
- つる 暑い、やめて!!
- りん しょうがないでしょ!だって今嬉しすぎるんだから。もう全国の囲碁ファンの方、一人一人とハグしていきたい気分。
- つる それはそうだ。でも、カンケツとのハグは断る(笑)
- りん ひどい(笑)。ちなみにさ、つるさんはあの応氏杯第3局はどこで見てたの?
- つる 自宅です。序盤、一力さんの方に流れがあったじゃない。その時はワクワクで観てたの。でも逆転されて、コウになったあたりではもう相当苦しいと思って一回観るのをやめちゃったんだよね。
- りん この薄情もの!
- つる スミマセン。でも、しばらく経って中継を付けたら画面にはしゃいでる人たち(りんと蘇耀国九段)がいるじゃないの。えっ?と思って手順を追ったら再逆転してて、その時は思わず叫んだよね。
- りん そりゃ叫ぶよ。私だって蘇さんとルイボスティーとココアで乾杯したんだから。あんなに美味しいルイボスティーは初めてだった。2階の大盤解説会でもすごかったみたいだよね。(吉原)由香里(六段)さんがヒールで大ジャンプして、もうウワー!!ってすごい歓声で。私、ちょうどつるさんが観るのをやめちゃったあたりで解説会にいたんだけど、その時はお通夜みたいな雰囲気だったのよ。そこからの歓喜。感情ジェットコースターです。
- つる (しみじみと)一力さんって、すごいね。もともとすごいのは知ってたけど、改めて思う。
- りん 何もかもがこの優勝への伏線だったような気がするよ。まず、柯潔九段との準決勝三番勝負。初戦負けての2連勝っていうのだけでもドラマチックだけど、実は二人は11歳の時に応氏杯ワールドユース大会っていうジュニアの世界戦で決勝を打ってるんだよね。その時、一力さんは負けて準優勝。同じ応氏杯で16年越しにリベンジを果たしたっていうのがすごい。
- つる さらに謝科九段は前回大会の準決勝三番勝負の相手。この時一力さんは2連敗で敗れてるんだけど、今回はその借りを返すかのように決勝の舞台で3連勝。これもまたドラマチック。
- りん さらにさらに、19年前に日本に優勝をもたらしたのが張栩(九段)さんで、一力さんが優勝を決めたまさにその碁の解説を張栩さんがしているというね。
- つる まだあるよ。今回一力さんのサポートで帯同していた許(家元九段)さんは10年前、第1回グロービス杯世界囲碁U―20の決勝の相手。あの時ユースの世界戦優勝を争った二人が、今度はチームとして世界戦優勝を果たした。
- りん ゾクゾクが止まらないね。あれもこれも運命・・・。
- つる そう思っちゃうよね。でも、それは一力さんに失礼だと思うな。だって、一力さんはどんな時も世界戦優勝という目標に全力だったもの。たまたまこのタイミングで花開いただけで、一力さんにはその準備ができていた、そう思うな。
- りん そうだよね。でも、でもだよ。その「たまたま」がここに来たっていうのには運命を感じちゃう。第3局の謝科さんの負け方って、あのレベルではなかなかない逆転のされ方だったじゃない。勝勢といってもいいくらいだったのに、まるで魅入られたように負けコースに入っていって。
- つる 確かに謝科さんの変調もあった。でも何より一力さんが冷静だったのが大きいと思う。信じられないようなプレッシャーの中で戦っていたに違いないけど、いつも通りというか。
- りん そういえば、応氏杯第3局直前の名人戦第2局、つるさん同行していたよね。一力さんどんな感じだった?
- つる いつも通りだった。特別気負っている感じもなかった。
- りん 数年前までの一力さんはどちらかというと気負うタイプだったよね?
- つる そうそう。井山(裕太三冠)さんになかなか勝てなかった頃の一力さんは「勝ちたい気持ちが前に出過ぎて力が発揮できない」って悩んでたイメージ。でも、今回は全然そんなことがなかったね。対局終わりに温泉に二人で入ったんだけど、ピリピリした感じは全くなかった。
- りん ご本人も言っているけど、そこは意識してメンタルトレーニングしてきたんだろうね。
- つる 力みが取れて一位になったんだな、一力さんだけに。
- りん ・・・・・せっかくいい話だったのに(笑)。
- つる 反省します。最近なぜかオヤジギャグがどんどん湧いてくるようになっちゃって。
- りん ちょっと、ギャグ担当は譲らないよ(笑)。で、我々は?
- つる ワレワレ?
- りん やだなー、今回、一力さん優勝で「観る碁委員」を久々に招集したということは、また「つるりん式観る碁のすすめ」、再開するんでしょ?
- つる 再開・・・したいよね。したいけど、毎週はキツイ。もう年だから。
- りん えっ?一力さんは記者会見で「年齢は考えずこれからもっと上を目指す」って言ってたのに?
- つる 忘れちゃいけない。我々は凡人なんだよ。特におじさんは使えるエネルギーが限られてて無理するとすぐ体にくるんだから。
- りん じゃあ隔週か。
- つる ・・・目標月1で。
- りん うむ、一力さんを見習って有言実行、頑張ろうね!
- * ☆☆祝・一力遼世界一☆☆「つるりん式観る碁のすすめ」その2では応氏杯決勝五番勝負からつる&りんが感動した一力三冠の手をご紹介します。
記・品田渓