初代中庸・林漢傑八段の中庸戦徹底解説(4)―振り返り編【コラム:品田渓】


 11月6日、7日に第4回SGW杯中庸戦本戦が行われ、潘善琪八段が優勝しました。そこで、今回は見どころ解説などをしていただいた林漢傑八段に今大会を振り返っていただきます(初代中庸・林漢傑八段の中庸戦徹底解説(1)(2)(3)参照)。

(品=記者品田、林=林漢傑八段)

  • (品)本戦は出場者16人によるスイス方式の4回戦。二日間で計32局が行われました。その結果、4連勝で第4代中庸に輝いたのは潘八段、準優勝は3連勝同士で決勝戦(優勝決定戦)に進んだ奥田あや四段となりました。お二人とも先生の予想には...
  • (林)はい、ありませんでした。
  • (品)感想をいただけますか?
  • (林)いやー、本当にお二人とも強かった。脱帽です。そして、予想を外したのはスミマセン。ただ、ちょっと言い訳してもいいですか?
  • (品)どうぞ!
  • (林)まず、潘八段ですが、本当は候補に入れようと思っていたんです!でも、中庸戦の少し前に一緒にご飯を食べたんですね。その時に「調子はいかがですか?」と聞いたら「うーん。そんなに良くないよ」って言ったんですよ。これにやられました。完全にミスリードされてしまったんです。
  • (品)奥田四段を入れなかったのは...
  • (林)言い訳のしようがありません。完全な間違いでした。まさかこれほど強いとは!本当に申し訳ない。
  • (品)はい。では、本戦を振り返っていただきたいと思います。まず、優勝した潘八段の戦いぶりからお願いします。
  • (林)勢いがありましたね。2回戦で私が本命に挙げていた張豊猷八段に勝ち、3回戦で私の相方、鶴山淳志八段(林八段と鶴山八段は「つるりん」としてユーチューブや週刊碁で活動中)を破りました。特に鶴山八段と戦った碁はすさまじくて、戦闘に次ぐ戦闘でした。鶴山八段の攻めがうまくいって潘八段の大石が取られたように見えたのですが、最終的には地合で勝った。大どんでん返しで、まさに名局でした。
  • (品)奥田四段も3連勝で勝ち上がりました。2回戦で優勝候補に名前が挙がった金秀俊九段を、3回戦で先生がオススメした大垣雄作九段を破っています。
  • (林)そうなんです。金九段との碁はフリカワリに次ぐフリカワリでとても面白い碁だったんですけど、奥田四段の方が苦しい時間が長くて、最後に逆転した。これで勢いがついたんじゃないかと思います。3回戦の大垣九段との一戦は素晴らしい内容で完勝していました。
  • (品)そんなお二人の決勝戦はいかがだったでしょうか。
  • (林)潘八段の充実ぶりが際立った一戦だったと思いますね。奥田四段も鋭い踏み込みを見せたのですが、途中からやや一方的な流れになってしまいました。
  • (品)金九段が潘八段の優勝を受けて「勝ってきた相手を見ても、内容を見ても、彼こそ優勝にふさわしい」とおっしゃっていましたが。
  • (林)本当にそう思いますね。心からおめでとうございますとお伝えしたいです。
  • (品)先生が注目していた方たちの戦いぶりはいかがだったでしょうか。表を見ると・・・、オススメの大垣九段は3位、対抗の安斎伸彰七段は4位と上位に入っていますね。そして、本命の張八段は8位です。
  • (林)そうなんですよ!優勝、準優勝を外しているので何も言えないですが、私の予想もまったくあてにならないってほどじゃないんです(笑)!張八段は優勝者に、大垣九段は準優勝者に負けているわけで...。私の予想もいい線いっていた、ということにしてください。お願いします(笑)!
  • (品)安斎七段は・・・
  • (林)安斎七段は1回戦で堀本満成五段と当たっているのを見た時に嫌な予感がしたんですよね...。堀本五段はもともと実力者で棋士仲間での評価が高い棋士なのですが、特に大物食いで有名なんです。予感は的中しました。
  • (品)先生の相方、鶴山八段は2勝2敗ですね。
  • (林)内容は素晴らしかったんですけどね...。2連勝のあと2連敗...。まずはスタミナを付けましょうとアドバイスしたいと思います(笑)。
  • (品)では、最後に本大会を振り返っての総括をお願いします。
  • (林)今回は全体を通して面白い戦いの碁がたくさんありました。中庸戦の本戦はNHK方式(1手30秒1分の考慮時間10回)の早碁ということもあり、スリリングな展開になることが多いです。観ていただいた方には楽しんでいただけたのではないかと思います。私の予想は残念ながら外れましたが、そのくらい誰が勝ち上がるか分からない、面白い棋戦なんだ、と思ってください!
  • (品)中庸戦の模様は11月15日発売の週刊碁に詳しく載っています。決勝譜の他に、2回戦から奥田四段が決勝進出に弾みをつけた金九段との一戦、3回戦から早碁の名局と評判の潘八段と鶴山八段の一戦、最終戦からは先生のオススメ大垣九段と鶴山八段が戦った譜を紹介しています。
    先生、今回はありがとうございました。また来年もよろしくお願いいたします!
  • (林)任せてください!今度こそ、優勝を当ててみせます!!


予想が外れたことを反省する林漢傑八段

順位対局
番号
棋士名1回戦2回戦3回戦4回戦勝ち数SOSSOS
OS
相手勝敗相手勝敗相手勝敗相手勝敗
1 7 潘  善琪八段 8 6 15 12 4 7 40
2 12 奥田 あや四段 11 9 2 7 × 3 11 31
3 2 大垣 雄作九段 1 4 12 × 15 3 8 38
4 13 安斎 伸彰七段 14 × 16 5 4 3 8 30
5 9 金  秀俊九段 10 12 × 11 14 3 7 35
6 15 鶴山 淳志八段 16 14 7 × 2 × 2 11 31
7 14 堀本 満成五段 13 15 × 6 9 × 2 10 35
8 6 張  豊猷八段 5 7 × 14 × 11 2 9 32
9 4 林  子淵八段 3 2 × 1 13 × 2 8 30
10 16 大橋 拓文七段 15 × 13 × 8 1 2 6 36
11 5 松本 武久八段 6 × 8 13 × 3 2 6 32
12 11 水間 俊文八段 12 × 10 9 × 6 × 1 9 32
13 1 黒瀧 正樹六段 2 × 3 4 × 16 × 1 8 28
14 3 加藤 充志九段 4 × 1 × 10 5 × 1 6 27
15 10 岩丸  平七段 9 × 11 × 3 × 8 1 5 31
16 8 中野 寛也九段 7 × 5 × 16 × 10 × 0 9 24


潘善琪八段と奥田あや四段による優勝決定戦


第4回SGW杯中庸戦を戦った面々と、株式会社セントグランデW社長の嶋屋宏則さん、他大会関係者で記念撮影